第13話 順調!順調! 学園生活はバラ色?……
校長の許可をもらって、『空手部』は無事立ち上げた。
目下のところ顧問一人、部員二名である。
普通のクラブなら入部者を募って、問題なければ入部決定なのだが、おれが立ち上げたクラブは基本的におれの目にかなった奴しか入れない。
自由入部制ではないのだ。
だってさあ、自由に入部させてたら、部員千を超えるかもなんだぜ? 統制できるわけがないし、どこで練習すんだよって問題もある。
部長=ランボ、副部長兼マネージャー=ミニオンである。
ミニオンもランボもお互いどうすっかなって思ったが案外すんなりと仲良くやってくれているようだ。
二人とも『死にたい』と思うほどの悩みを抱えていたせいもあるし、何よりおれから救いの手を差し伸べられたということで安心したみたいだ。
これで恋のキューピット役が果たせたのならそれはそれでめでたしめでたしである。
ランボと親しくなると、宿舎で引きこもっていた男子生徒も最初は離れた席で、食堂で同じ時間に夕飯だけは食べるようになった。
まあ朝はまだ無理だな……
それでも大前進である。
管理人のリオンさんも泣いて喜んでくれているみたいだし、校長からも学年主任始め全職員からも賞讃の言葉をいただいた。
「さすがはわたしの見込んだだけのことはある。これからも男子生徒の相談に乗ってやってほしい」
そりゃあ、高額給与もらってますからねえ、仕事はしますよきっちりと……
でも正直なところは男子生徒もいいけど、もっと女子高生、女子生徒と仲良くしたいんですけど……
みんなもそう思ってるはずだよね、たぶん……
「ところで許可はしたが、『空手部』とはなんぞや? 聞いたことがないぞえ?」
数百年生きてきたあんたでも知らんものがあるんかい?
「今失礼なこと考えておらんかったろうな……」
「いえいえ、決してそのようなことは……」
「まあいい。で、空手部とは?」
「前世…… いえ、わたしの生まれた地元で広く行われていた『武術』で、基本的には武器を使わないで戦う護身術に近いものといえばわかってもらえますか?」
「ふむ、格闘技の一種ということじゃな、護身術ならばおぬしにも必要なものであろう。男子生徒も自分自身を鍛え身を守る手段にはちょうどよいかもしれん」
「武器を使うこともありますが、初心者のうちは主にこぶし、蹴り、肘が武器になります」
「男子生徒も含めてこの学園の生徒を鍛えてくれるならいいことずくめじゃ、よろしくたのむぞ」
「はい、承知しました」
「うむ……相変わらず律儀な男よ……こんな男が世におったとは……それはさておき、待望の『歓迎会』の件じゃ」
やった! ついに歓迎会!
「なんせこの学園の職員全員と言っても数百人はおるでな…… すまんが三十人ずつ相手に毎日、いや毎晩になるか…… 十日ほどよろしく頼む……」
「へ?」
「いやだから十日間、相手をとっかえひっかえ毎晩酒池肉林、いや飲み会じゃ。かかる経費はおぬしの分は学園の経費として落とすで心配はいらぬ」
えっと…… これから毎日とっかえひっかえ違う女三十人と十日間飲みまくれと……
おれ、身体持つ?…… 飲むだけですよね、飲むだけ…… ちょっとくらいお触り許されます?
「あ、言っておくが職員に手をだしても『死刑』にはならんが、相手に訴えられたらケコーンだからの、その点覚悟して飲み過ぎないように注意してくれ。万が一の『間違い』や『魔がさした』とか言われても困るでの……」
いや、それなんの苦行ですか? 罰? 刑?
いい女三百人相手に一度たりとも間違いを犯すなって…… 無理っすよ……
「そうしないとな、あぶれた職員が暴動を起こしかねんのじゃ……」
「じゃあ、みんな一斉にというのは……」
「そんなんで満足するはずがなかろうよ…… おぬしでも想像がつくであろう」
そうだよなあ、たった一人の男相手に三百人が集まっても競争率が高すぎて自己アピールできる時間なんてないだろう。
自己アピールタイム三秒……だったら暴動だな、普通。
三百人の美女たちと『飲み会』…… 前世なら喜んでホイホイされたかもしれない。
でもこの世界では『間違い』厳禁なのだ……
帰りに薬局で『栄養ドリンク』買占めする必要があるかもだな……
薬局のお姉さんの恥じらう表情が想像できてしまう自分が恐ろしい……
こうしておれは、今夜から十日間の『苦行』へと旅立ったのだった……
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