第12話 生徒相談二人目…… イジメダメ!絶対!ってか
人生相談、いや生徒相談二人目のご対面である。
おれに相談にきた女子生徒の名前は、ミニオン。
相談内容は端的に言って『イジメ』である。
入学以来なぜかいじめにあい、現在も陰湿ないじめにあっているという。
「先生、わたしもうこの学園で生きていくことは無理なんでしょうか…… いじめ……つらいです。死にたいです。でも田舎から出てきて期待されてやっと入学できたんです。うううっ……」
このミニオンっていう少女は、獣人である。聞いてみたら狼族らしい。
モフモフしたい…… 頭、耳、しっぽ…… なでなでしたいのであるが、おのれの欲望のままにいったら『死刑』だ…… がまんするしかない……
「いじめにあう理由とかはわかる?」
「……いえ、わかりません。でもいじめてくるのは皆どこかの貴族様のご令嬢なんです。わたしが獣人のそれも平民でこの学校に入学してきたことが、気に入らないのかもしれません……」
ああ、これもなるほどってやつかな……
この学園は通ってくる生徒は裕福な子が多く、貴族家も多い。学費も一般の学校に比べれば高い。一般庶民には高嶺の花なのだ。
そんな世界に単身友達もいない平民の女の子が入ってくればターゲットにはなりやすいだろう。性格的におとなしくてかわいいとなればいい意味でも悪い意味でもかまいたくなるのはある意味必然だ。
単純に生徒相談をおれとのつながりゲットのためにやってくる輩ならどうでもいいのだが、こういうほんとに困っている子は何とかしてあげたい。
この子には相談相手さえもいなかったんじゃないだろうか……
話を聞いてくれる相手がいれば、少なくとも一時の癒しにはなるだろうけれど、でもそれは根本的な解決にはならない。
前世であればおれ一人の力など無力だっただろう。
しかし、この世界に転移したおれは『スーパースターの卵』なんである。
なんとかしてやるしかないじゃないか。いたいけな少女が、死にたいとまで言って相談しにきてくれているのだ。ここで無下に突き放したら、この世界で何のために唯一の希少なる『男性教師』として存在するのか……って話だ。
「君をいじめている相手のことは、今のところ面識がないけれど、今度君をいじめてきたら、その主犯格の女子生徒だけにこうささやいてみればいい」
「ん? なんて言ってやればいいんですか?先生……」
「ユウ先生はイジメを許さない。イジメを実行している生徒は嫌われる…… そう伝えてみてくれないかな」
「そ、それだけですか?」
「今日君がぼくのところへ相談に来たことは多分先方もしっているだろう。だからぼくがそう言っていたと伝えるだけでいいよ」
「…… それだけで相手がおとなしくなるかはわかりませんが、でも……やってみます」
「それでも効果がなかったらもう一度相談に乗るよ。かわいい生徒をいじめるやつは許さない」
「…… あの、先生、かわいいって……」
「うん、もちろん君のことに決まってるでしょ」
「…… 先生…… ありがとう…… ううううっ……かわいいなんて、男性に言われたの初めてなんです」
「世の中のすべての人が違うと言っても、ぼくはきみのことは『かわいい』と断言するよ。自信をもっていいんじゃないかな」
(ああ…… だからモフモフさせてほしい…… なんて言えないよなあ)
「先生に、先生みたいな男性にそういってもらえたことを、きっときっと自信にあな、なります。生きていく気力が湧いてきます!」
いや、まあ興奮するのはいいけど日本語しゃべれ…… あれ? なんでこの世界は日本語が通用するんだろ?
「母にもこのことを伝えます! きっと喜んでくれるです。先生ありがとうございました」
涙で己の手の甲を濡らす、いたいけなモフモフ美少女の手をそっと包んでハンカチでこぼれた涙をぬぐってやる…… いいよね、そのくらい…… 死刑にはならんよね……
「先生…… 先生の手、とっても暖かい……」
うんうん、よかったね…… これで自殺でもされた日にはおれが浮かばれん……
「そうだ、君も今度ぼくの作る予定の『クラブ』に入らないかい? まだぼくと一人だけのクラブだけど良かったら君も……」
「お、お願いします!」
「クラブが一緒ならもっと相談に乗りやすいからさ」
こうして新規クラブ、空手部の会員二人目ゲット~です。
ちなみに数日後以降、件のいじめはなくなった模様。モフモフ美少女には改めてお礼を言われたよ。よかったよかった。
そしてそれ以来、この学園ではいじめがすっかりなくなったらしく、後日いじめのない学校としてこれまたテレビ局の取材を受けたことは報告しておこう。
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