第11話 熱気むんむんの大講堂…… 三百人を前に授業開始です
大講堂で、三百人の美少女を相手に授業を行う教師の立場っていうのをちょっと想像してみてほしい。
今までの学園内でのいろいろな騒動を経験してきたおれは、生徒の待つ教室に後から入るよりは、あらかじめ大講堂の教壇でやってくる生徒を待ち構えることにした。
徐々に増えていく美少女の群れ…… そう群れである。美少女、それも美女系ありかわいい系ありで尚且つその中にはエルフもいれば獣人モフモフもたくさんいるのである。そしてそれらの生徒がほぼ教壇で待ち構えるおれのことを、獲物としてとらえているのだ。
普通の男ならちびってしまうかもしれない。
が、しかしおれはこの世界では二十三歳のペーペー教師ではあるが、前世では社会の中で海千山千の相手をしてきた中年男なのだ。
そんじょそこらの男子とは、精神耐性力が違うのだよ、ふふふ。
舐めてもらっては困る…… と思ってました、すいません……
圧倒的美女軍団の熱気は、半端じゃありませんでした。
正直言って怖かったです、はい……
それでも授業が始まれば、この世界では唯一の数学者としてなんとかふるまうことができました。
「それでは授業、講義を始めますが、この講義ではテキストは一切使いません。ノートすることも自由です。今日は最初の講義なのでまずは質問を受けます。質問のある方は挙手してください。 あ 、でもプライベートな話や授業とは関係ない質問はこの場ではお答えできませんのであしからず」
「はい!先生」
「ん? はいどうぞ」
「先生が一度担当された一年のクラスで話されたという、『掛け算』について詳しく教えてください」
「うん、掛け算ね…… そうだね、じゃあまずこのクラスのこの部屋の人数をどうやったら素早く計算できると思いますか?」
「ええっと、順番に数えて、数えきれなくなったらとりあえずメモして続きをさらに数えてメモを増やして、最後に全部を足し算します」
「そう、足し算という手法ではそうなりますね。この教室の第一列は二十人が座っています。縦列は十五列です。掛け算というのは二十×十五を瞬時に計算できます。答えは三百です」
「え? どうやったんですか?先生! 一瞬でここにいる人数を計算できるなんて聞いたこともありません」
教室内が驚愕のどよめきで溢れんばかりだ……
「それが掛け算というものです。君たちの先ほどの計算方法は足し算と言います。数学、いえ算術の世界の最も単純な演算方法は次の四つになります。足し算、引き算、掛け算、割り算です」
割り算て何? と多くの生徒がきょろきょろしている。
「ああ、じゃあ例をあげましょう。単純な方がいいでしょう。今ここに九百個のお菓子があるとします。ここにいる三百人で分けると一人頭は何個になりますか?」
「はい、先生!」
「どうぞ」
「その問題は指を使っても数え切れません。大勢の人が集まって時間をかけないと答えがだせません」
「ここで割り算を使います。九百÷三百=三、すなわち一人頭では三個ということになります」
「なに~! なんで~ なんでそんなに早く計算できるの?」
「て、天才か! 人間じゃないよ、それ…… 頭の中、どうなってるのかしら」
「四則演算というのはそういうことです。複雑な計算は筆算すれば可能です。もっと慣れてくれば難しい計算も頭の中だけでやれるようになります。暗算というやつです」
「せ、先生! それはこの授業に出席していればいずれはできるようになるんでしょうか」
「誰でもできるようになりますよ」
さらに出席した生徒たちからの「信じられない~!」の声の大合唱である。
ああ、前世では小学校一年生、六歳幼児レベルなんだって、それ……
もちろんそんなことは声にはだしませんて……
というわけでおれはまず最初に、ここにいる全員に『九九』を覚えてもらうことにした。
この九九を覚えておれから合格をもらえたものからそれから先の授業に参加をさせることにしたので、当分は授業内容は『九九』の暗記テストとなってしまった。
だが驚くことなかれ、この『九九』は この世界では画期的なことだったのだ。まあその行く末についてはまた別の機会に話をしよう。
ともあれ授業終了後は、恒例の質問攻めに囲まれたことは言うまでもない。
ううっ点美女軍団に囲まれても、おれからは手が出せないこの苦痛…… どうしてくれるんだ…… おれの欲求不満はどうやって解消すればいいんだあ……
そんなおれの表情を見透かしたかのように一人の女子生徒がぽつりと……
「そんなの簡単じゃん、先生『恋人』つくればいいんだよ」
「そうそう、あたいがなってあげよっか? 先生の『こ・い・び・と』」
「恋人なら毎日だってね…… うふふっ……」
そりゃあ、わかってるよ、わかってるんだよ…… 目の前に集まってくる生徒たちは恋人には出来んのよ……
それなら同じ職員の中から…… 職場恋愛もありか……
もうすぐ歓迎会のはずだ! それだ! 待っていてくれ、未来のおれの恋人~
「「卒業と同時にすぐに嫁になれるように、今のうちから準備が必要ね!」」
そう考えた女子生徒の数は…… 数え切れなかった……らしい
さて第一回目の講義が終了したので、次は二人目の『生徒相談』である。
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