第9話 仕事が増えます、とっても……
ロり校長、いえジェム校長と再度の面談では仕事の話であった。
今おれは、校長に言われた新たな仕事の内容を色々思案しながら、宿舎の夕食をぽつんと一人で食べている。
他の男子生徒をいまだに見たことがない。
ただ一人キッチンの向こうでは、こっそりとおれの一挙手一投足から瞬時も目を離さないようにと管理人兼料理人のリオンさんの姿がちらほら……
が、今はそれどころじゃないのだよ……
新たな仕事は大きく分けて三つ。
一つ目は、おれの担当する算術の授業を単一のクラスを受け持つのではなく、希望者を募った公開授業として行ってほしいとのこと。人数は抽選で約三百人単位で毎日二コマ。
なぜそうなったかは自明ではある。
ほぼ全部のクラスから、おれの授業を受けたいという希望と言うか叫びが殺到したことが理由の第一。もはや暴動一歩手前であったらしい。
そして第二の理由は、おれが実際に受け持ったクラスのだれかが、自分の担任経由で校長までその授業内容を伝え、これは教育界さらにはこの国に一大変革をもたらすかもや、と教師も校長も考えたためである。
そりゃあまあ、今まで掛け算すら知らなかった方たちである。おれのその知識たるや産業育成はもとより、軍事面において貴重性に気付かないはずがない。
やっちゃっていいのか、この異世界で…… っていう気がしないわけでもないが今更引く気は毛頭ないのだ。
目指せハーレム、女子高生に囲まれたいちゃらぶ生活!
それがおれのこの世界で生きるモットーなんだ…… それ以外のことは知ったこっちゃないし…… それさえ邪魔されなければオールオッケーである。あとは命の心配だけ……
で二つ目の仕事…… 生徒相談である。
この学園では主に担任教師が、生徒の希望により個々に勉学、生活、はたまた恋愛相談までこなしている。
今までは多くが担任に相談をしていたのだが、それほどの相談件数があったわけでもない。せいぜい一人の教師あたり月に数件程度だ。
ところがおれが新任教師として紹介されたとたんに、生徒相談が殺到! 全校生徒約二千五百人中約二千人が相談申請を上げたらしい。
それに相談を依頼する担当教師は生徒自身が『指名』できるのである。
前世でのホストも真っ青なくらいの指名獲得人数だろう。
二千人…… 毎日一人頭三十分として日に十人…… 向こう一年は予約で一杯です状態である。
これはまあ、一年もしないうちに卒業していく予定の五年生を優先に相談を受けていくことにした。
彼女らにとっては『相談』というよりは、卒業してしまう前になんとしてもおれとつながりを確保してしまいたいのが正直なところであるのは、おれにも想像は容易につく。
ん? 卒業した生徒なら手を付けても死刑にはならないんじゃね?
なら将来の嫁さん候補を今から物色しているだけなら…… いいよね、たぶん……
それはさておいて、三つ目。
某地方テレビ局からの取材依頼である。
早速情報キャッチしたらしい。早いね、仕事が……
内容はインタビューとおれの一日の生活についての追っかけ取材。
とりあえず学園名、所在地、一緒に映るかもしれない生徒の顔出し禁止を条件に受けることにした。というか受けざるを得ない。
この学園の宣伝込での年収一千万であるし……
学園名は伏せていてもいずれは制服やら何やらでばれるのは時間の問題。すでにご近所さんから情報だだもれだろうしね……
「ごちそうさまでした、リオンさん。とってもおいしかったですよ」
食べ終わった後の食器下げ時に、手と手がほんの少しだけ触れ合う瞬間……
リオンさん、熱があるんじゃね?やっぱり…… 顔が真っ赤っかですよ……
(ありがとうって言ってくれた!ありがとうって…… 男性からそんな…… この職場は、天国です~ 手が手が…… 今日はもう洗わない! いえ、一生洗わない!)
リオン、言葉にならずです。
そういえば、リオンさんは学生ではない。まあ年上なんでどうかとは思うが、それなりに恋愛対象ではある。それも手を出したって罪にはならん。手を出しても強制結婚させられる心配もない。美人だし、スタイルもいい。なんといっても胸が…… 決して大きくないが、傍からみたらどう見てもおれ好みの形と程よいボリューム感なのだ。
触ってみたい、見てみたい…… ぜひ!
いやよそう…… 今から手を出したら収拾つかなくなりそうだ…… 慎重に、人選は急いては事を仕損じるってやつですね……
明日は授業の前に数件『生徒相談』の予定である。
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