第3話 管理人 リオン

「は~…… 緊張した~」


 学園の男性宿舎の管理人である、わたくしことリオンです。


 男子宿舎の管理人やってるから、確かに男子生徒とはたまに顔を会せるんだけど、連中は基本引きこもりだし、たまに顔をあわせても挨拶すらしない。

 管理人のわたしの顔を見るなり逃げていくやつばっかりだし……


 でも、でも…… 今日はなんという幸福感に包まれた一日だったことでしょう。

 わたしにも神様はいたってことですよね?


 だってあんなに長い時間、男性、それも結婚適齢期のイケメンと一緒に居れてお話もできたなんて夢のような時間でした……


 あんなにやさしそうにわたしに、いえ、女性に話しかけてくれる男性がいるなんて信じられません。


 だって世の中の男という男はほとんどが不愛想か、女を性欲の道具としか見ないような軽薄なのしかいないんです。それでも男性と知り合いになれれば大変な幸運と言えますけどね。


 あんな男性と同じ空間に一緒にいただけで熱がでてしまいそうでした。

 この幸運を実家のお母さまにもお伝えしなくては……


 ユウさん、いえ、わたくしのなかでは既に『ユウ様』です。


 これから毎日一緒に、いえ同じ屋根の下で生活できるかと想像しただけで、濡れて、いえ舞い上がってしまいそうです。


 この幸運はできるだけ他人には知られないようにしなくては……


 そうだ! 毎朝のユウ様の出勤時から学園までは、こっそりとわたひが陰から護衛をすれば、いいんじゃない!?

 変な女にさらわれでもしたら、わたしのバラ色人生が霧散してしまいかねません。

 断じて護衛の任を全うしなければ……


 それにしてもわたしの料理が毎朝毎晩、ユウ様に食べてもらえるなんて、げへへ……


 ひょっとしたら洗濯物も?…… おおおっ! くんかくんかできるかも!

 ユウ様の匂いを嗅いだだけで失神してしまいかねません。

 お風呂も! 一緒にはさすがに無理ですが、ユウ様の残り湯をこの身体に存分に与えることができるかもしれないです! いえ、絶対実践してわたしに男性成分を補給せねば……

 背中を流しましょうか? お、お願いします。とか言われたりして…… ううううっ! こりゃたまりまへんで…… そうだ、親友のヴィオレには魔道具で自慢しておいてやろう。くやしがるぞお~


 意気込んで第一日目の夕食にユウが顔を見せなかったために、次の日の朝まで落ち込んだ管理人でした。





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