第2話川風の 涼しくもあるか うちよする

秋たつ日、うへのをのこども賀茂の河原に川逍遥しけるともにまかりてよめる

                               紀貫之

川風の 涼しくもあるか うちよする 浪とともにや 秋は立つらむ

                          (巻第四秋歌上170)


立秋の日に、殿上人たちが賀茂の河原に川遊びに出かけ、その供として付き添った時に詠んだ。


川風が実に涼しく感じられます。この川辺に打ち寄せる波とともに、秋が立ったからなのでしょうか。


吹く風で「波が立つ」と、秋が「立つ」と掛けてある。

やはり宮中の建物の中では、なかなか涼しさを感じられない。

だから、立秋の日、少しでも涼を求めて、賀茂川の河原をそぞろ歩きする。

そうしていたら、好都合にも涼しい風が吹き、河原には波が立った。

これも賀茂の神の御恵みか、そんな感謝も読み込まれているような気がする。


※紀貫之:貞観十四?~天慶八?(872-945)。

 古今和歌集の中心となる選者。

 また古今和歌集の仮名序の作者。三十六歌仙の一人。

 和歌の技術に優れ、仮名序では卓越した和歌論、歌人評論を述べている。

 官職には恵まれなかったものの、宮廷歌壇では活躍。

 三代集(古今・後撰・拾遺)全てに最多入集を果たした。

 勅撰集には計四百七十五首が入集、また「土佐日記」の作者である。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る