34
自分の病室の前までたどり着いたところで、「くしゅん!!」と瞳がくしゃみをした。それから瞳は大きく鼻をすすった。
そのくしゃみで瞳の存在がばれたかと思ったが、どうやらあの看護婦さんは僕を追いかけることを諦めたらしく、光は闇の中を下に向かって移動していて、そのころには周囲に人の気配はなくなっていた。
僕は瞳に「にゃー」と鳴いて、大丈夫かと尋ねた。
「心配してくれているの? ありがとう、猫ちゃん。でも大丈夫だよ」と笑いながら瞳が言った。
瞳は笑顔でごまかしているが、その体はかすかに震えていた。どうやら体を冷やしてしまったようだ。習慣になっている行動だとはいえ、あの寒さの中を出歩いたのだから、無理もないことだと僕は思った。普段の瞳がどんな風にお散歩をしているか、僕にはわからないけれど、どうやら今日の瞳はいつもよりも少し無理をしてしまったようだ。
「それよりもさっきの猫ちゃんはすごかったね。おかげで助かっちゃった。ありがとうね、猫ちゃん」と言って瞳は僕の頭を撫でると、それからそっと病室の扉を開けて、暖かい部屋の中に移動した。
僕は瞳の小さな子供用のコートの中から飛び出してテーブルの上に乗り、瞳はコートと厚手のマフラーと手袋を脱いでそれらを壁の出っ張りに引っ掛けた。それから瞳はストーブの炎を少し強めにして、すぐにベットの上で横になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます