19
瞳は朝と同じように行動をして、僕も同じような行動をとった。
お話をしながら食事をして、それが終わると瞳は薬を飲み、丁寧に歯を磨いた。そしてまた僕におやすみなさいを言って、瞳はベットの中で眠ってしまった。僕はまた、眠っている瞳の胸の上に座り込み、そこから死体のような瞳の顔と、窓の外に降る雪を交互に眺めた。
それから時が経過して時計の針は十の数字を指したころ、とんとんと扉がノックされた。病室の中に入ってきたのは看護婦さんで、お昼のときと同様に、その人は無言のままだった。片付けられた食器をお盆にのせ、やはりお昼のときと同様に僕を見て、それから病室をあとにした。
雪は心持ち弱くなっているような気がした。もしかしたら雪は、雨に変わるかもしれないと僕は思った。僕は雨降りの日が好きだった。別に雪も嫌いではないのだけど、僕は雪よりも雨のほうが好きだった。だから僕は窓の外に降る雪が雨に変わればいいな、と思った。
僕は雨降りを思いながら、窓の外に降る雪をじっと見つめた。
雪の勢いが弱くなったからなのか、窓の外には一本の木が見えた。それは枯れた柳の木だった。それなりに大きな木だ。その木はただの一本だけで、なんの脈絡も無しに、ぽつんと白い大地の上に立っていた。
僕はなにか珍しいものでも見るように、その柳の木を見た。枯れた柳の木は、瞳の病室の窓からよく見える位置に立っていた。
それから僕は柱時計に目を向けた。
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