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 瞳はパンをちぎり、今度はそれにジャムを塗って食べた。そしてスプーンを使ってスープを飲み、小さなフォークを使ってミートボールを一口食べて、またパンを食べた。

「猫ちゃん。さっきのお医者さんはね、大麦先生って言うんだよ。大麦木馬先生。すごく優しい先生なんだ。だから猫ちゃん。大麦先生とけんかとかしちゃ、だめだよ」

 僕は瞳の言葉に返事をしなかった。大麦先生とけんかをしないという約束ができる自信がなかったからだ。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、瞳は上機嫌なまま、大麦先生の話を始めた。

 その瞳の説明によると、大麦先生は瞳の主治医をしているお医者さんで、本名は大麦木馬と言い、歳は六十を幾つか越えていて、髪は白く、お腹が少し膨らんでいるのが特徴ということだった。確かに瞳の説明通りだったけど、一つだけ僕と瞳の認識が食い違っているところがあった。それは瞳が大麦先生がとても優しい先生だと言ったことに対して、僕はそうは思っていなかったという点だ。僕には大麦先生がとても怖い先生に見えていた。その認識は当たっていると思う。大麦先生はきっと猫に厳しくて、人間の瞳にだけ優しい先生なのだ。

「それでね、私の面倒を見てくれているのが、秋子さんと、冬子さん。二人はこの病院の看護婦さんでね、見た通り、そっくりな双子さんなんだよ。二人の見分け方はね、優しい方が秋子さん。ちょっと意地悪なのが冬子さん。最初はわからないと思うけどね、慣れるとすぐにわかるんだよ。あ、秋子さんだ、とか、あ、冬子さんだ、だとかね。ちなみに、お姉さんが秋子さん、妹さんが冬子さんだよ」

 秋子さんと冬子さん。

 お姉さんが秋子さん、妹さんが冬子さん。優しいのが秋子さん、少し意地悪なのが冬子さん。僕は瞳の話を聞きながらそんな風に二人の分類を頭の中で行った。

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