真夜中のお散歩

１４

「じゃあ朝ごはんにしようね、猫ちゃん」と瞳は言った。

　先ほどの大麦先生たちの会話や、今の瞳の発言から、僕は現在の時刻が朝の時間帯であることがわかったのだけど、しかし外は暗いままだった。もしかしたら、この世界では朝も昼も空に太陽は顔を出さず、ずっと真っ暗なままなのかもしれなかった。窓の外に降る雪も昨夜からずっと降り続いたままだった。

「いただきます」

　瞳は手を合わせてからそう言うと、パンを一口サイズにちぎって、それにバターをぺたぺたと塗りながら、小さな口を大きく開けて、もぐもぐとパンを食べ始めた。僕はそんな瞳を見ながら、器用に舌を使ってお皿の中のミルクを飲み始めた。

　瞳の食事はとても質素なものだった。パンは少し大きめだったけど、おかずはミートボールだけで、ほかにはスープとサラダとミルクがあるだけだった。それは小学校で見る給食よりも量が全然少なかった。僕自身も、あまりごはんを食べるほうじゃないけれど、これでは幾らなんでも量が少なすぎると思った。野菜は多めだけど、栄養だって全然足りないのではないかと心配になる。もっとも瞳にとってはそれは当たり前の風景のようで、僕に向かって「猫ちゃん。ミルクだけでお腹いっぱいになる？　パンも少し食べる？」とか言ったりするくらいだった。

　僕は嫌そうな顔をすることで瞳の提案を断った。僕の朝ごはんは確かにミルクだけだったけど、猫になった僕にとってはそれだけで十分お腹がいっぱいになることは、昨日の夜に証明されていたことだった。