13 ねえ、知ってる? 太陽はね、いつもあなたの頭の上で、ずっと輝いているんだよ?
ねえ、知ってる? 太陽はね、いつもあなたの頭の上で、ずっと輝いているんだよ?
しばらくすると、こんこん、という音がまた聞こえてきた。
扉が開いて、そこからさっき病室を出て行ったばかりの冬子さんが顔を出した。
「おはよう、瞳ちゃん」
「おはようございます。秋子さん」
瞳の言葉を聞いて、僕はその女性が冬子さんではなくて秋子さんだということがわかった。秋子さんは瞳だけでなく、僕にもとても優しい表情を向けてくれたので、確かにこの人は秋子さんなのだろう。秋子さんはその手におぼんを持っていた。秋子さんは病室の中に入ってくると、そのおぼんの上にのっていたお皿を机の上に丁寧な仕草で置いていった。
パンが二つ乗っているお皿。そのパンにつけるためのジャムとバターが一つずつ。白い湯気の出ている暖かい野菜のスープ。温野菜のサラダ。美味しそうなミートボール。そしてミルクの瓶が二つ(これは一つは真白の分だった)と透明なガラスのコップが一つ、そしてからっぽのお皿が一つ。
それらはどうやら瞳と僕の食事のようだった(その食事を見て、まるで小学校の給食のようだと僕は思った)。秋子さんはそれらを机の上に並べ終わると床の上に置かれたままになっていたミルクの空き瓶と空っぽのお皿を手にとってそれをおぼんの上にのせた。
「大麦先生、猫ちゃんと友達になっていいって許可してくれた?」
「はい。許可してくれました」
「うん。よかったね、瞳ちゃん」
「はい。ありがとうございます。秋子さん」
そんな会話を終えると、秋子さんは笑い、僕の頭を一度撫でてから、瞳の病室を出て行った。秋子さんがいなくなると、瞳はベットからスリッパの上に降りてそれを履いた。そして机の前まで移動して小さな丸椅子の上に腰を下ろした。僕は机の上の空いている空間目掛けてジャンプをした。多少、食器が揺れたが、問題なく僕は机の上に飛び移ることができた。場所はちょうど瞳の反対側になる。瞳は僕が落ち着くのを見て、ミルクの瓶を開け、それを空っぽのお皿の中に注いでくれた。
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