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 目を開けた瞳はまず秋子さんを見て、次に自分の胸の上にいる僕を見て、それから顔を動かして丸椅子に座っている年老いた男の顔を順番に見た。

 瞳はゆっくりと体を起こし始めた。僕は邪魔にならないように空いている空間に移動する。瞳はそんな僕を見てくすっと笑うと、「おはよう、猫ちゃん」と僕に朝の挨拶をした。それから瞳は年老いた男と秋子さんのいる方向に顔を向けて「おはようございます。大麦先生。冬子さん」と二人に笑顔で挨拶をした。

「おはよう瞳ちゃん、今朝の具合はどうだい?」と大麦先生と呼ばれた男が、優しい顔で瞳に言った。

「……はい。大麦先生のおかげで、だいぶよくなりました。今はとくにどこも痛くなったりしないです」と瞳は言った。

「瞳ちゃん。私たちに遠慮しないで、本当のことを言ってもいいんだからね。痛みを感じたり、体の調子が変だなと思ったら、その場ですぐに私たちに報告すること。いいね?」

「はい。わかりました。冬子さん」

 三人は僕の存在を無視して会話をしていた。僕は大麦先生の瞳に向ける優しい顔を見て、それから冬子さんと呼ばれる女性の顔を見た。どうやらこの女性は似ているだけで、昨日僕にミルクをくれた女性とは別人らしい。この人は秋子さんではなくて冬子さん。

 言われてみれば、どことなく違うような気もするが、僕にははっきりと二人の違いを見分けることができなかった。あえて言えば、機嫌がいいのが秋子さん、機嫌が悪いのが冬子さん、といった感じだ。それくらいしか僕には二人の見分けをつけることができなかった。

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