第3話 ご利用は計画的に


 やたらと長い爪を持つ真っ黒な人影が、青い水晶の祀られた屋代の鳥居に、ガンガンと爪を振り下ろしている。


 ふむ。おそらくは、この水晶こそが本拠地の要。鳥居は結界を作る役割があり、まずはそれが破壊されないと、屋代に祀られた水晶が攻撃されることはないようだ。


『要水晶の耐久値は1。鳥居が破壊されたら、屋代を守る結界が壊れます。守り抜いてください』どこからかトビリノメカミの声がする。


「了解!」とサイガを構え、ズドンと撃ち放った。


 が、どうやら安全地帯の中から攻撃することはできないようで、撃ち放った弾丸は拠点を守る結界に阻まれ、黒い人影までは届かなかった。


 あちゃー。弾一発、無駄にしちゃったよ。


 銃口を人影に向けたまま鳥居を飛び出し、しっかりと狙ってトリガーを引く。


 キィィィィィィ! と甲高い悲鳴を上げ、黒い影が弾けるように霧散していった。


 おお、一発か! というか、むしろ貫通して、人影の向こう側にあった岩に、四つの銃痕を残している。


 中々に強力な武器のようだ。あるいは、相手が雑魚だったのか。……両方かなぁ〜。


『気を抜かないでください。単独で発生することは少ない魔物です。まだ近くにいると思います』


 草木の一本も生えていない、荒廃した廃墟。薄暗く、紫色の空がどこまでも続いている。


 崩れた建物や、ゴツゴツとした岩がそこらじゅうにあり、言いようのない不気味さを醸し出すステージだった。


 あー、ライトとか灯りになるようなアイテムがあれば、有利になりそうなステージだな。いや、逆に敵から見つかりやすくなるか。暗視ゴーグルとかあれば使いたいところだが、メニューにあったっけかなぁ。


『魔物の正確な居場所は、感知能力に長けた眷族か、特殊能力で相応の能力を購入しなければ、把握することができません。一旦、安全地帯に入っていてください。私はリュウゼンら主力メンバーのサポートをせねばならないので、一旦貴方から視点を外します』


「は〜い」


 返事をして鳥居の中に入ったものの、それ以上トビリノメカミの声が聞こえてくることはなかった。


 物音一つしない、不気味な静けさ。車の音や街の喧騒も聞こえなければ、風の音や虫の鳴く声も、一切聞こえてこない。全くの雑音がない状態だ。


 ああ……マジにゲーム用に作られた世界なんだなぁ。そんなことをしみじみと実感しながら、辺りの様子を伺っていると、


 キィィィィィィ……。


 不意に横手から、建て付けの悪い古いドアが軋むかのような。不気味な声が響いてきた。


 さっき倒した黒い人影と同じ魔物が、鳥居の向こうに姿を現す。


 しかも二体。重なるようにしてゆっくりと、拠点に向かって近づいてきていた。


 おっと、お仕事の時間です。


 軽い足取りで鳥居を飛び出し、銃口を向けてズドンと撃ち放つ。重なるようにして接近していた人影が、二体同時に弾けて霧散していった。


 うん。こいつら程度なら、サイガで余裕で倒せるみたいだ。どうやら五発同時に発射される散弾銃のようだが、そのうちの一発で撃破しているらしい。


 五匹まとめて現れてくれたら、一網打尽にすることも可能なわけか。まぁ、そんな都合の良い条件、中々揃わないだろうけれど。綺麗に一列に並んで、出現してくれるわけじゃなし。


 うーん。ちょっと効率悪いなぁ。おそらくはあの黒い人影が一番弱い魔物で、獲得ポイント100。それをそのままHP100、と解釈して差し支えはないだろう。


 サイガの攻撃力が、100×5といったところだ。


 残り弾数は三発を残して、獲得ポイントは300。まぁとりあえず、サイガをもう一丁買えるだけのポイントは稼げたわけだ。


 拠点付近の魔物の発生は、稀だって言ってたから……このまま待ってても、簡単にポイントは稼げないことになる。


 ポイントが稼げなければ、新しい武器も買うことはできない。しかし敵がいなければ、そもそもポイントを稼ぐことができないわけだが……困ったな。


 感知能力を購入すれば、魔物の居場所が分かるって言ってたよな? しかし購入するといっても、どこで? さっきの待機ルームとやらに戻らなければならないのだろうか。


 思い、鳥居をくぐって拠点の水晶に近づいてみる。と、水晶の上に、立体映像のメニューが表示された。


 なるほど。ここで購入可能なわけね。どれどれ、感知能力のメニューは、と。


 調べてみると、レベル1でも200ポイントが必要なことが分かった。


 今の俺には結構な出費だが……まずは敵の居場所が分からないと、どうにもできない。迷わず購入、っと!


 残りポイントが、150と表示されている。散弾銃の残り弾数は三発。これだけじゃちょっと心許ないな。


 しばらく悩んだのちに、100ポイントで購入できる槍を選択した。手に持ってみると、重さもほとんど感じず、小枝のように自在に振り回すことができた。


 槍の持ち手の部分にも、散弾銃と同じく数字が表示されている。やけに数字が多いなと思ったら、こちらは使用回数ではなく、カウントダウンが表示されていた。


 なるほど。近接武器は使用時間があるのね。残り五十九分うん十秒……てことは、一度購入すれば、ちょうど一時間使えるってことか。


 さて、それよりも気になるのは感知能力だけど……と思った瞬間に、頭の中に周辺の地図のようなものが浮かんできた。中心には屋代のマークがあり、緑色の点滅がある。おそらく、この点滅は自分自身なのだろう。


 屋代には980という数字。これは間違いなく、残りの耐久値だ。


 加えてマップ上部には、45:00というカウントダウン。一秒ずつ減ってゆく。これはおそらく、残りの試合時間だろう。


 ふむふむ。ある程度の情報は表示されるわけか。これは中々に有り難い。レベルが上がれば、表示される情報も増えてゆくのかも知れない。


 と、不意に赤い点滅が三つ、近くに表示された。ゆっくりと屋代に向かって近づいてきている。


 同時にライフバーのようなものも表示されていて、それぞれに100という数字が出ていた。


 地図に従い、岩陰に隠れながら移動すると、先ほどの黒い人影が三体、屋代に向かって移動してきているのを発見した。


 岩陰に身を潜めたまま、十分に近づくまで引きつけると、スチャリと散弾銃を構えて、ズドンと撃ち放つ。


 一匹だけ少し離れた場所にいた人影を、撃ち漏らしてしまった。こちらの存在に気がついた人影の動きが、急激に活性化して襲いかかってくる。


 慌てずに散弾銃を肩にかけると、代わりに槍を構えて、人影目掛けて真っ直ぐに突き出した。


 影が長く鋭い爪を振り上げ、勢い良く振り下ろしてくる。が、恐れず突き出した槍先が人影の身体を貫通し、振り下ろされた長爪がブンっと空を切った。


 キィィィィィィ!と甲高い悲鳴を残し、弾けて霧散してゆく。


 よし、思ったとおりだ! こいつの攻撃、食らったら多分ヤバいんだろうけれど、当たらなければどうということはない!


 とにかく、これでまた350ポイント!


 と今度は、屋代にいたら分からなかったであろう少し離れた場所に、二つの赤い点滅があるのに気がついた。


 数値は、200と250。おそらくはこれまでとは違う魔物だろう。


 さてどうしよう。ここは一旦戻って、サイガを買い直すべきか……しかし残りの二発を上手く使えば、倒せない数値ではない。


 しかしちょっと離れた場所であるため、そっちに行ってる間に、本拠地付近に魔物が発生してしまったら……。


 いや、仮に本拠地付近に魔物が発生しても、いざとなったら死んでリスポーンすればいいのか。本拠地の耐久値もまだまだ余裕がありそうだし、武器を買い直すポイントも確保してある。


 敵の居場所も分かっているため、臆することなく進む。点滅に近づくと、壊れた廃屋に身を潜めながら、こっそりと覗き見た。


 ゴブリンと呼ぶに相応しい姿の、二匹の魔物。手には反り返った偃月刀を握っており、片方は生意気にも盾を装備している。


 うーん。どこかで見たことある容姿だな。なんかのゲームで、これと全く同じ奴が出てきた気がする。もしかしたらこのゲームで発生する魔物は、元となるデータが、現実世界のゲームの中に存在しているのかも知れない。


 まぁとにかく、おそらく盾持ちの方が、250ポイントの魔物だろう。盾の耐久値が50あるってところかな。


 距離は、およそ百メートルほど。確実に仕留めるには、もうちょっと近づきたいところだ。


 見つからないように這いずって匍匐前進をしながら、ちょうどいい岩場へ移動する。岩の上に銃身を乗せて、狙いを定めて撃ち放った。


 ちょうど二匹が重なったところを狙ったのだが、盾持ちの方は盾が破壊されただけで、倒し切れず生き残ってしまった。


 ヤバ、単純に耐久値が50ってわけじゃなかったのか! いや、ショットガンの軌道というのは、常に一定じゃない。おそらく、距離が遠すぎたんだと思う。ちくしょう、俺としたことがチキっちまった!


 残り一発を撃とうと銃を構えるも、俺の存在に気づいた魔物が、思っていたよりも俊敏な動きで、一気にこちらへ間合いを詰めてきた。


 慌ててズドンと撃ち放つも、エイムが合わずに外してしまう。瞬間、握っていたショットガンが、音もなく消え去っていった。


 グェェェェ!とカエルが潰れたかのような気色悪い奇声を上げ、偃月刀を振りかざしたゴブリンが飛びかかってくる。


 間合いは槍の方が長い。瞬時に判断し、力任せに槍を突き上げた。が、


 ゴブリンが手にした偃月刀を、振り下ろした勢いのままブンッと投げ放った。


 ズブリ、と槍の刃がゴブリンの腹を貫通し、槍を握る手に重い衝撃が伝わる。同時に、


「ごふっ…!?」


 焼けるような鋭い痛みが、喉の奥まで一気に潜り込んできた。偃月刀の切っ先が俺の喉に突き刺さり、口の中一杯に生暖かい鉄錆の味が広がる。


 ゴブリンの身体が霧散してゆくのを視界の隅に捉えつつ、呼吸もできずに大量の血を口から噴き出した。堪らず偃月刀を掴み、喉から引き抜くと、ドクドクと喉の奥から溢れる血液が、さらに輪をかけて呼吸を妨げる。


 息のできない苦しみと焼けつくような痛みに耐えながら、喉を押さえて横向きに倒れ込んだ。


 死んだこれ。……思ったものの、一向にリスポーンされる気配がない。死に切れなかったのだ。


 ようやくながらこれが、ゲームであると同時に現実であることを、思い知らされた。


 徐々に、意識が遠くなってゆく。あとどれくらい待てば、死が助けに来てくれるのだろう。


 いや……待てよ? 確か治療能力を購入していたはずだ。でも……どうやって使えばいいんだ?


 試しに喉を押さえる手を意識して、治れ、治れと強く念じた。すると手の平が薄く発光し、痛みが、徐々に引いていった。


「ごはっ…!」


 最後に一度、大量の血を口から吐き出してから、ようやく呼吸ができるようになった。


 涙が滲んだ視界で、口や鼻から垂れ流された血溜まりを見下ろし、はぁはぁと荒く息をする。


 危なかった。マジで死ぬとこだった。しかし、これで一つハッキリとしたことがある。


 死ぬなら、一気に死ね。中途半端に生き延びたら、死ぬほど苦しい目に遭う。生き返ることはできるのだから、無理して生きる必要もない。絶対に死んだ方が楽だ。


 いや、生き延びられたら、すぐさま治療を使わなければならない。治療能力を購入しといてよかった。やっぱり基本は大事だね。というかゲームを進行するのは自前の身体である以上、治療能力は必須だ。


 ということは……スタミナ強化とか腕力強化とか、強化系の能力も購入できたと思うけれど、ゆくゆくはそれらも必須の能力になりそうな気がする。


 どうやら現実世界にあるゲームの知識も、役に立つ場面はあるようだ。というかおそらくこのゲーム、人間の世界にあるゲームを元に、作られているのではないかと思う。さっき倒したゴブリンも、最初に見た影のような魔物も、どこかで見たことがあるような気がしたからだ。


 ていうか、この感知能力がまず、現実のゲームではチート級の能力だ。敵の位置が分かるってのは、このようなサバイバルゲームでは、最も役立つ能力なのだから。


 神の戦士らは自前の能力に絶対の自信を持っているから、ゲーム内に設定された武器や能力を使う者はいないって言ってたけれど……この有用性に気づいている者は、誰もいないのだろうか。だとしたらこのメリットを、最大限に活かしたいところだ。


 そうか。ゲームなんてしたことがない神様やその眷族は、この手のゲームをちゃんと理解していないんだろう。ルールは試合のたびに変わるとか言ってたけれど、ルールをちゃんと熟考した上で、使える能力を予め吟味しておけば、絶対的に有利にゲームを進められるはずだ。


 どんなゲームでも、戦略ってのは大事だよ。チーム戦のサバイバルゲームでは、司令塔を置いて戦略的に行動するゲームも多い。


 差し詰め、今の俺が取るべき行動は……


 一つしかない。


 地面に転がっていた槍を拾い上げ、ゆっくりと立ち上がると、


 一目散に、拠点へと向かって全力疾走した。


 そうして拠点で再び散弾銃を購入すると、拠点付近に発生した雑魚を狙って、ポイントを稼いで回る。


 ポイントだよ。まずはポイントを貯めないと、今の状態ではやれることが少な過ぎる。今回はもう、クソゲーに費やすものと割り切って、とにかくポイントを貯めるのです!


 だって俺の役割も、拠点付近に出現した魔物を倒すことだって言われたもん! 悪いことしてないもん! 命令通りのことをしてるだけだもん! 僕おりこうさんだもん!


 魔物の発生場所は、およそ五百メートル範囲内ならば、すぐさま感知できる。


 どうやら拠点に向かって進撃してくる魔物ばかりではないようで、100ポイントの雑魚でも、離れた場所に止まっている奴らもいた。


 数値を見ながら、出来るだけ低い奴を選び、反撃を受けない距離で確実にショットガンで仕留めてゆく。


 何度も散弾銃を購入し、撃破数を稼いでいると、銃器の購入画面に、それまでは表示されていなかったメニューも並ぶようになった。


 なるほど。経験値というか熟練度というか、使用することでレベルアップする機能もあるらしい。サイガ12のレベルも、今まではレベル5が最高だったものが、新たにレベル6が加わっている。レベルが上がるごとに、購入価格がアップする代わりに、威力と弾丸数も上がってゆく仕様のようだ。


 ていうか、300で六発は少ないな。新しく追加されたSMGのメニューの中から、ポイント500で購入できる、短機関銃ウージーを選択してみた。


 レベル1ながら、弾丸数は50。トリガーを短めに引いて撃ち分ければ、明らかにショットガンよりも効率よく稼ぐことができる。弾一発分の攻撃力は、50あるかないかぐらいだが、HP100の人影くらいなら、二、三発当てれば楽に倒すことができた。


 

 そんなこんなでゲームが終わる頃には、5000近くのポイントを貯めることができていた。

 




 

「お呼びですか、トビリノメカミ様」


 試合後に主神から呼び出されたリュウゼンは、開けた障子の向こうで、やけに機嫌が良さそうにテーブルの上の画面を眺める主神の姿を見て、珍しいこともあるものだと驚いて目を見張った。


 このところ、特に神々のゲームが始まってからは、いつも難しい顔をして、笑顔を見せることも少なくなっていた主神だった。それはリュウゼンだけでなく、彼女に仕える眷族達の誰もが、密かに杞憂していたことだ。


「ごらんなさいリュウゼン。やっぱり私の目に狂いはなかったのです」と、クスクス笑いながら、テーブルの上に表示される画面を指差す。


 そこにはサンクチュアリーバトルの、個人戦績の画面が表示されているようだった。どうやら、例の少年……アマタカの戦績画面らしい。


「総獲得ポイント……8350? まさか、ただの人間が、一試合でこれだけのポイントを稼いだというのですか?」


 もちろんリュウゼンら神の戦士らは、それを遥かに上回るポイントを獲得している。しかしそれはリュウゼンらが、主神に与えられた強い神力を保有しているからだ。大鬼をも一撃で薙ぎ倒す神槍を扱う能力もなく、身を守る神鎧を纏うことも許されていないただの人間が、一体どのようにしてそれだけのポイントを稼いだというのだろう。


 やはりあの男は、か弱き人間となっても、自分らの常識で当て嵌めることはできぬのか……。リュウゼンの心の内に、かつての友を畏怖する思いと、誇らしい思いとが、同時に染み込んでいった。


「しかも所有ポイントも、5000を残しています。初めてでこれなんですよ?」


 言って嬉しそうに微笑む主神の顔に、言いようのない嫉妬を覚えさせられる。


「……そのポイントはどうするのですか。好きにさせていると、詮もないことに浪費してしまうでしょう」


 それはリュウゼンらにとって、許し難きことだった。


 試合に参加するだけでも、相当量の神力を主神は、運営に支払っているはずなのだ。リュウゼンらが獲得したポイントは全て、消耗した神力の補償にと、主神に献上している。試合に勝てればプラスにもなるだろうが、負ければ主神の力は、衰退してゆく一方なのだ。


 この戦いは、決して負けるわけにはいかないのである。大きなリスクを背負った大事な戦いであれば、尚更に。


「好きにさせようと思っています。彼を無理矢理に引き込んでしまったのは、私達なのです。せめてそれくらいの見返りがあっても、いいじゃないですか」


「本気ですか?」


「彼が戦うには、どうしてもポイントが必要なのです。自前の能力で戦える貴方達と違って、彼は非力な人間なのですから」


「……それだけでは終わらない気がします。知っているでしょう? ポイントを得た神々が、それをどのように使用しているのかを」


 通常、ゲームで獲得されたポイントは、マスターとなる主神が全てを管理し、運用している。それはいわば、神々の世界の仮想通貨のようなものであり、神力や金銭など、様々なものに交換することができた。


 一部ではそのポイントを使って、魂の取り引きまで行われているという、黒い噂もあるほどだ。


 トビリノメカミはリュウゼンの真っ当な忠告に、しばし黙り込んでテーブルの画面を見つめていたが、ややあってクスッと可笑しそうに目を細めた。


「アマタカですよ。たとえ好き勝手に浪費しようと、悪いことに使ってしまうと思いますか? 精々が、友達と一緒に豪遊するくらいのものでしょう」


「……そうですか」


 それもまたリュウゼンにとっては、俄かに許し難いことだった。それでも、久しぶりに目にする主神の笑顔を前にしては、それ以上文句を言うこともできなかった。


「……次もまた、呼ぶことになりそうですね」


 言いながら、自分が言った言葉に対して、知らずに口元がニヤけてしまっていることに気がついた。リュウゼンがそれにハッとして、口元を引き締めて憮然とした表情を見せると、トビリノメカミはそれに気がついたようで、


「いずれはまた、貴方と並んで戦うことに、なるかも知れませんね」言って、からかうような視線をリュウゼンに向ける。


 リュウゼンは憮然とした顔を崩すことなく、


「有り得ませんよ。彼は、人間なのです」言ってそっぽを向き、つまらなそうにフンと鼻を鳴らした。

 

 

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