第65話 通話
17時を過ぎた頃、菜月は帰ると言うので駅まで送っていく。駅までは歩いて10分ほどで、話をしながら歩くとあっという間に着いた。
電車が出る時間まではあと2分なので改札前で菜月と別れる。
「じゃあな」
「バイバイ晋也、また月曜日にね」
「おう」
菜月は小走りでホームへ続く階段を登っていく。その背中を見送った後、俺は家に帰った。
家に着き、鍵を開けて中に入る。夏帆はまだ帰っていない。何をしようかと思ったちょうどその瞬間、携帯からメッセージの通知が鳴った。
『今、時間はあるだろうか?』
メッセージは光からだった。特に用事もないので『大丈夫だよ』と送信する。
5秒程で既読がつき、再びメッセージが送られてくる。
『良かったら通話してみないか?』
そういえば前に光と約束していた。嫌な理由など1つもないし、むしろ光のような美少女と通話するなんてメリットしかない。
『おう、じゃあするか』
『晋也からかけてもらえないか?やり方が分からないんだ……』
『りょーかい』
俺は通話ボタンを押し、光が出るのを待つ。コール1回で通話が繋がった。
「もしもし」
「も、もしもしっ」
「はは、緊張しなくて大丈夫だよ」
「き、緊張などしてないわっ。だがやっぱり声が違って聞こえるな」
「まぁ通話なんてこんなもんじゃないか?俺には光の声はあんま変わらずに聞こえてるぞ」
「変じゃないだろうか?」
「変?可愛い声だと思うけど……」
「か、可愛いっ!?冗談はよせ」
「え?マジなんだけど……」
「ゲホッゲホ(急になんてことを……。これが無自覚か……)」
「大丈夫か?」
急に光が噎せ始めた。何か俺は変なことを言っただろうか?
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