第66話 実行委員

「そういえば今日晋也と通話したかったのには理由があるんだ」

「理由?」

「ああ、頼み事があってな。林間学校の実行委員を一緒にやって欲しいんだ」


林間学校とは令和高校の1年生が行う宿泊行事だ。夏休みの最初の3日間を使って行われると以前夏帆に聞いた。


「任せてくれ。そういえば林間学校はクラス委員二人も選ばないといけないんじゃなかったか?」

「それに関しては竜胆くんと佐久間くんに頼むつもりだ」

「それなら安心だな」


大地と俊は女子や男子からも差別を受けることを覚悟した上で光に謝り、協力すると誓ってくれた義理堅く本当に良い奴らだ。この二人なら光が頼めばすぐにオッケーを出してくれるはずだ。


この四人なら上手くやれると思う。あとはクラスの他のやつらがどう動くかだ。


その後、俺と光は適当に色々なことを話した。その時間はとても楽しく、気が付いたら一時間を越えていた。


ちょうどその時に玄関が開く音が聞こえた。夏帆が帰ってきたのだろう。


「ごめん、夏帆が帰ってきたからそろそろ切るわ」

「そうか、二人は兄妹だから一緒に住んでいるのか。羨ましいな……」


そうか、光は俺が夏帆と住んでいることに嫉妬するくらい夏帆と仲良くなっていたのか……。さすがは同性と言うところか。


「じゃあ泊まりにくれば良いんじゃないか?夏帆もすぐオッケー出すと思うぞ?」

「と、泊まりっ!?ちょっと考える時間をくれ……」

「まぁ日付とか親とか色々あるからな。じゃあもう切るぞ」

「あ、ああ……。また月曜日だな」

「おう、おやすみ」

「おやすみなさい」


俺はゆっくりと通話を切った。まだ何か余韻のようなものが残っている。


俺は壁に立て掛けた松葉杖を使って立ち上がり、夏帆の出迎えのため玄関に向かった。

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