第64話 両親の事実
俺の人生の中でも上位にランクインするレベルのピンチな状況に俺は追い込まれていた。さっきまでは笑顔で会話していたというのに、今では顔がまったく笑っていない。
これは選択肢を間違えたらおそらく死ぬやつだ。慎重に答えようと脳をフル回転させたときだった。
階下から誠二さんの声が聞こえる。
「春乃さん、急がないと次の飛行機も遅れちゃいますよ~」
「は~い、今降りま~す」
そう言って母さんは俺たちに背中を向ける。
「晋也、そういう事をするなら責任は取りなさいね」
「いや、ちが」
「じゃあまた行ってきまーす」
それだけ言った母さんはすぐに出発してしまった。俺と菜月の間に少し気まずい空気が流れる。
「あれは母さんのジョークみたいなやつだから気にすんな」
「う、うん……」
「とりあえずスマブラトゥーン3やるか?」
「……うん」
なんかジト目でみられた。よく分からないが文句なら変な空気を作った母さんに言ってくれ……。
結局その後、スマブラトゥーン3で俺は菜月に完膚なきまでにボコボコにされた。
◆
「なかなか上手くいかないものね。晋也ったら夏帆ちゃんじゃない女の子部屋に連れ込んでたわ。まぁ幼馴染みなのだけれど」
「そうだね。まったく夏帆も晋也くんも気付かないもんだね。なんで晋也くんの名字が変わらないのかってことにね。僕たちは法律上は再婚してないからね」
外国製のオープンカーに乗る誠二と春乃は確かにそう話していた。
2人は婚姻届けを出していない。その事実と理由を晋也が夏帆が知るのはまだ先のことだ。
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