第49話 記憶

俺はバスで学校へ向かう。

うちから徒歩5分の場所にはバスの停留所がある。

そこからバスに乗ると学校近くまで行ける。

松葉杖を使い歩くことも出来るが、いつもの2倍は時間はかかる。

更に今日はかなり暑い。

熱中症になるのは笑えない。

俺が熱中症になったなら間違いなく両親は帰ってくるだろう。

2人の新婚旅行の邪魔はしたくない。


バスに乗りおよそ10分、バスは『令和高校前』に着いた。

校門から中に入る。

令和高校にはグラウンドが2つある。

入ってすぐのグラウンドは土で、今は野球部が練習している。

そしてその奥のグラウンドは芝であり、サッカー部が練習している。

本来ならば自分もあそこにいたと思うと、少し寂しさがある。

そんなとき俺は後ろから声をかけられた。


「おい風間、謹慎はどうした?」


「部長!?いや、今日は妹の忘れ物を届けに来ただけです」


「ならいい。無茶はせずにしっかり治せよ」


「分かりました。ありがとうございます」


やはり部長はいい人だ。

はやく治るよう、ケアやリハビリを今まで以上にしっかりやろう。


そして俺は体育館棟に入る。

令和高校の体育館棟は尋常でなく広い。

バスケが同時に3試合出来る広さのアリーナが1階に2つ、柔道場、剣道場、武道場、卓球場、トレーニングルームなど様々な部屋がある。

体育館棟の入り口の部活の体育館使用の表を見る。

女子バスケ部は第2アリーナらしい。

俺はそこに向かう。

その道中だった。

壁を背にして座り込んでいる銀髪の女子を見つけた。

顔は俯いているので見えないが、記憶が何かを訴えかけてくる。

俺の足音に気付いたのかその女子は顔を上げた。

目線が交差する。

俺は息を呑んだ。

そして彼女も。

思わず声がこぼれた。


「菜月……」

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