第30話 大和撫子(3)

*光視点です(次から本編に戻ります)



彼の優しさは心地よく温もりがあった。

包容力もあり、今すぐにも埋もれてしまいたい。

だけど1度甘えてしまえば多分私は戻れなくなる。

少し疼く心臓に蓋をする。

大丈夫。今までも一人だったんだから。


放課後の掃除も私一人でやる。

40分近くかかってしまうのだが、これはあまり苦ではなかった。

私は綺麗好きというか綺麗にするのが好きだった。

確かに一人で机やゴミ袋を運ぶのは大変だが、綺麗にするのが好きという気持ちで耐えられた。

そんな時にも彼は現れた。


「本田さん、俺もやるから」


彼に甘えてはいけない。

そう思い遠回しに断るが彼には効かない。

強引に始めてしまう。

しかし、その強引が私の為であることも分かっている。

私はここまで優しくされたことが無かった。

近付いてくる男子は皆下心を持っていた。

だから男子が苦手だった。

でも風間くん、彼には最初から苦手意識が無かった。

初めて見たとき、決して惚れたわけではないとか言っていたが、それは違った。

多分初めて見た瞬間から私は彼に惚れていたんだ。

そしてその思いは日直日誌や掃除を経てますます強くなった。


そして私は彼と友達になった。

今は友達。

あくまで“今は”だ。

まずは彼をもっと知りたい。

彼ともっと話したい。

久しぶりに早く明日になって欲しいと思えた。

大丈夫、きっと未来は明るいから。

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