第29話 大和撫子(2)

翌日の朝、彼は四天王のことを話題に出した。

あぁ、離れてしまうのか。

もっと話してみたかったなぁ。

とか考えていた。

けど彼は離れなかった。

それどころか今まで以上に話しかけてくれる。

そんなとき、私は日直日誌について聞かれた。

クラス全員に押し付けられた差別の象徴。

そのことを話してしまった。

もう分かっていたのだ。

彼は良い人すぎる。

こんなことを言ってしまえば必ず助けてくれるだろう。

彼を利用するように行動した私を醜く感じた。


「じゃあ本田さん、明日から俺と1日交代にしない?」


彼は案の定救いの手を差しのべてくれた。

そしてその提案は私の葛藤を振り払うものでもあった。

彼は深く考えて言ったわけでは無いだろう。

しかし、1日交代ならば私も半分をやるのだ。

押し付けてしまう罪悪感を軽くしてくれる物だったのだ。

それだけではない。

彼は圧力に屈しないと誓ってくれた。

口約束ではあるが、これまでの彼を見れば言うまでもない。

だから私は心から笑えたんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る