第17話 見せてください

それは六時間目のときだった。

科目は世界史。

俺のいた高校では1年で日本史、2年で世界史を学習する。

しかし令和高校は逆だったのだ。

つまり教科書が無い。

となると必然的に、


「本田さん、世界史の教科書見せてもらえますか?」


「ああ、構わないさ。じゃあ机を付けようか」


「え?いやいいよ、そこまでしてもらうのは申し訳ないです」


「気にしないでくれ。私がやりたくてやってるんだ」


そう微笑みながら本田さんは言う。

1つ1つの所作が美しく、絵にして飾りたくなる衝動が湧いてくる。

そんなことを考えていると、彼女は席を俺の机にピッタリくっ付けた。

一部の男子が俺を親の敵のような目で見つめる。

ごめんなさい……


というかここで問題が起きた。

授業に集中出来ないのだ。

だって本田さんスッゴク良い匂いするんだもん。

髪を耳にかける動作、なるほどと小さく呟く口元をついつい目でおってしまう。

ひたすら精神統一を心がける。

なかなかにキツい時間となった。

次回からは夏帆に借りようと心に誓った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る