第7話 条件

目を覚ますとそこには見慣れない天井があった。

そうか、引っ越したんだった。

そして宝物は割れたんだった。

俺はベットから起き上がる。

大切なものを失ってなんだか虚しく、なんだか落ち着かない。

あれは確かに飾りではある。

あったところでサッカーが強くなるわけではない。

だけど証だった。

俺が毎日努力して手に入れた努力の証明、誇りだったのだ。

それの喪失は予想以上だった。


しばらくして誰かが扉をノックした。

俺はゆっくり立ち上がり扉を開ける。

そこにいたのは義妹であった。


「あの、中入っていいですか?何も触らないので」


「……ああ」


返事まで間があったのは別に入れたくなかった訳ではない。

それ以上に義妹の顔が気になった。

泣き晴らしたのか、頬には涙の跡が残っている。

朝初めて見たときの美少女ではなく、ボロボロになったか弱い女子であった。

見ただけで分かった。

どれだけ後悔して反省したのだろうか。

そのとき義妹が口を開いた。


「勝手に部屋に入って、盾を割っちゃってごめんなさい。私は罰ならなんでも受けます。だから、、だからお父さんが離婚するようになるのは止めて頂けませんか?」


「なんで?」


この質問はそれを考えているからではない。

単純な疑問からだ。


「お父さんはお母さんが死んでからずっと一人で、いつも寂しそうで、でもそれを隠そうとしてました。だからロボットみたいにやることを淡々とやるだけでした。そんなお父さんが最近幸せそうに笑うようになりました。私はお父さんの幸せを奪わせたくないんです……」


「許す代わりに条件が1つある」


「な、なんでしょう?」


実は決めていたことがある。

俺だって母さんの幸せを奪いたくないし、新しい家族と仲良くしたい。

父は2歳でいなくなってしまったので、父親からの愛情を受けた記憶がない。

兄弟姉妹がいなかったから、一緒に遊ぶ人はいないし喧嘩だってなかった。

だから家族が欲しかった。

そして条件は簡単だ。


「夏帆さん、俺と家族になってください」


「へっ!?」


義妹が一瞬で見える部分の肌が真っ赤に染まる。

あれ?言い方間違えたか?

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