海が聞こえる

遠くに見える小さな島

どこまでも続くい水平線

波が寄せてはかえす

彼女と二人できれいでもない砂浜を歩く

岩がころがり

波の連れてきたペットボトルや

懐かしいパッケージのカップ麺のカス…。


彼女が突然波打ち際に駆け寄り

何かをひろった。

不用意に近づくから、

波がかかってサンダルがベタベタだ。


塩水で丸まった水色の

ラムネピンの割れた破片だ。

嬉しそうに笑う。

でも…

こんなに近くにいるのに

彼女の顔が全く認識できない…。


海に向ってのびた船着き場で

水平線の向こう側の話をしながら

この娘がいったい誰なのかを必死で考えるが

まるででてこない。

ふいに頭痛がしてくる。

耳鳴りだ。

全身が強張り

吐気がしてきた。

いつものやつだ。

昔から寝ている最中に突然耳鳴りがする事があった。

そういう時は必ず金縛りがおこるのだ。

そして目覚めた時に

現実とも非現実とも区別のつかない世界をしばらく彷徨うのだ。

ん…?

と言う事はこれは…。


やはり夢だったか…。

安堵と共に

見慣れないベッドで寝ている事に気が付き、

再び不安が襲う。

ていうか、

ここは何処だ?


気が付きました?

今先生呼んできますね!


看護師?

なるほど僕は病院にいるらしい。

それに…

壁にもたれて寝ている

この娘はいったい誰なのだろう?

混乱と困惑

だけど僕の耳の奥には

まだ耳鳴りの前の

海の音が残っていた。

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