やまないあめ

ゲリラ豪雨とは良くいったものだ。

予想ダニしない大雨にすべてが水浸しになった私は、早くシャワーを浴びる事だけを考えながら家路を急いだ。


 買ったばかりの白いスニーカーが

雨と泥でグチャグチャだ。


なかなか乾かずに臭くなるの嫌だなー。


あまりの風の強さに途中で自転車を漕ぐのをあきらめて歩く事にした。


いつもは10分程で着くのに、

25分もかかってしまった。


あれ?


何かがおかしかった…。


いつもきっちりしまっている勝手口側の門があいていた。


なんとなく淀んだ空気を感じ、

表の玄関には向かわず

勝手口の方に足を向けた。


自転車をとめ、

やや足早に勝手口の扉に手をかける。


鍵はあいている。


今日居るはずの母の声が聞こえない…。


ただいま!


っていってみる。

でも返事はない。

サンダルがきれいに揃えてある。

けれど母の声はしない。


もう一度、

ただいま! 

って言ってみる。

いつもあたたかい部屋に、

自分の声が冷たくひびいた。


生臭い匂いがした。

電気はついていた。

いつもきれいな部屋に 

グチャグチャになっていた。


リビングに飾ってある

笹倉鉄平の絵は傾き

棚においてあるはずの家族写真は

見当たらない。

アイスクリームの食べたカス。

動物が食べあさったように

食材が散乱していた。


この扉の向こうの出来事を

もはや良い想像などできなかった。


外は一層激しく雨が降ってきた。

自分の顔が蒼ざめていく音がした気がした。ドクン ドクン

と脈を打つ鼓動が早くなるのを感じた。

荒くなる息。

鳴り止まない鼓動と 

降り止まないあめ…。

吸っても吸っても

酸素が足らない…。


そして私は意識を失ってしまったのだ。

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