蒼い月

 明け方4時

夜勤の仕事を終えて最寄りの駅に向かう為、駐輪場にとめていた自転車にまたがった。

会社から駅までは自転車で20分ほどだ。


 空を見上げると、

おそらくはさっきまで暗闇に光をあたえていた満月が、今まさに黒い雨雲にのまれようとしていた。


蒼い月だ。


雨雲のかかった月を見てそう感じた。


生温かい風が頬を撫でると

同時に背筋がゾクっとした。

 

嫌な天気だ。

駅まで降らなければよいけど…。

駅にさえついてしまえば、

電車を降りて5分歩けば僕の家だ。

駅前の西友で買い物して帰るだけ。

多少濡れようが帰ったら風呂に入って、

酎ハイを呑んで寝るだけだ。

 

 そんな事を考えながら駅の駐輪場に向って自転車をとばした。

明け方の街は人通りもまばらだ。

新聞配達のカブ

雨が降る前にといった感じなのか

犬の散歩をする人も

ウォーキングをする老人も

心なしか小走りだ。

当たり前の事だけど、

出会う人々は毎日少しづつ違う。

地下道を抜ければもう駐輪場だ。

って思ったら突然脅威的な雨が降ってきた。

舌打ちをしながら

急いで地下道の入口に向け

自転車を立ち漕ぎに切り替えた。

ちょうど地下道の下から自転車を押しながら登ってくる女の子が見えた。



そこまでは覚えているのだが…。


次に気がついた時、

僕の視線に入ったのは、

病院の天井だった。

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