ホヤの繊維

ジブラルタル冬休み

ぱからぱから

「私はほややややややややややややややややややややややや」

自己紹介の最中に轆轤に乗せられたホヤ。くるくるくるくると回り続ける轆轤。循環する機体に乾杯を暮らして、田中くんの目に八橋を乗せる。

田中くんはびっくりして、眼球に付着した肉桂の粉を払いながら「ソラァーそうだよ」などと口にする。

ホヤはまもなく自力で轆轤から降りた。整形されそうになったが、なんとかトゲトゲの先が丸くなったので済んだ。

「私は原索動物ですから」

漸く自由に口が動くわ、嬉しい。ホヤは嬉々として(徽々として)自己紹介を続ける。田中くんは気付いていない。ホヤは、もう知っているが、見えていない。札幌の冷たい東風に驚いて跳ねる麤しい海が後ろでたなびいている。

「きみゃあ、そうだ」

田中くんは一声!!鶴のようにおいおい泣いた。美味しそうなホヤはカロンカロン言いながら笑った。

「きみゃああー、とは面白い」

「そんな言い方してなゐよか」

「いや、したねェ、まちがいナイよ」

ぼくがたすけえやぬたのに、と誤変換をしながら思ったので、ホヤのアイキュウを軽く下げてやることにした。指先でホヤを平安貴族の言葉遣いのように殴る。

「ォイタッ、突然なんだい」

ホヤは痛そうにトゲを揺らす。アーハハハハハラハラハラハラハラと笑いこける田中くんと、ムッとしつつ頭をひらひらさせるホヤ。しかし、そうでした。ホヤを怒らせると僕にデメリットがあるんだった。

「殴んじゃないっ!生コン野郎のくせに!」

さて、いよいよ三人称小説だとおもわれるのが困難になって参りましたので私も透明でなくなることとしよう。フニャリフニャリと僕は姿を表す。田中くんは驚いてしまって胸の上に自分でチョップを3回やった。

「あんたいたんか」

「安泰啖呵?」

「バカ違わい。あんた、いたのかってんだよ」

こいつ何らかから影響受けてるなという口調で軽く僕を去なす田中くん、慎ましやかな。おかしな倒置法で人を惑わす。

遺憾鯛淡海いかんたいたんかい

こんな風にさらに相給を下げてみた。

「バカにすんのも大概が意外にしなよ」

ヒャァァァーっ、怒ってしまった、ホヤはさっきからずっと笑ってる。こら。お前笑うな。「ざざざざ」と呼ばれる黄金のメロディはさらに歌声を上げた(らしい)。のちに彼は「何?君。文句ある?君は無知だった、これ以上何がある?」と詰めかかってきたので、閉口した。と同時に並航した。

というわけで彼の言う「君」に自らの無知を恥じてもらうための説話を用意した。自訓である。

…吉田はそれらの理由で、そうめんを酷く嫌っていた。しかし、町田はそれを許さなかった。

「いいから食べるのよ」

段々と声色が高調する。

「たべーーる」

町田がそれを繰り返してドンドコドンとドラミングをやる。王宮はひっそりと佇み、まるで日本だ。

「早く食べてくれないかしら?」

鹿山はさらにさらに大きな声を出す。町田は面白い。そして、2回目の張り手が、おー、


おやっ!!


(追記 下のカタカナの羅列は眠い時に本当に打ったものです)

ゲ?キノスシカヲサンビキヨンネサスヌカアクヤフスハヘ


↑震える手が咄嗟に書いたのだろう。


兎に角、世の中は眠気に勝てないと言うこと。そして、前提を何もわかっていない男にスターウォーズのエピソード4を見せても何もわからないように、…いや、4。えーと、ハリー・ポッターと謎のプリンスを見せてもストーリーも何もわからないように、世の中はすべて明瞭に話すべきだと言うこと。僕は後者の欠番が甚だしいので気をつける。頑張るぞ。

ホヤの話に戻ろう。僕が道草をドレッシングかけて頂いていた間に、ホヤはもうすっかり愛知県あま市まで行っている。僕はどうかと言うと、ホヤがクルージングしてる牛車に乗ってついてってるから心配いらない。暇潰しにひつまぶしでも買ってランチとしようじゃないか。和食の時はランチとは言わないのかな?どっちにしてもまぁ、腹が減ってはXa(裏)も叩けぬ。

「田中くんのひつまぶしはご飯がないんだね」

「蒲焼き頼んだからね」

などと数学の話をするホヤと田中くん。そのうち二人は口ん中に脂と肉体と小骨と醤油の焦げたのが混ざっているのを(さよならだ)と噛みしめ、鋭い鋭い目を作った。僕はと言うと未だに凸である。ステルスメジャーである。窮地の少年に引っ張りだこである。(もっともステルスメジャーであると豪語する時点でステルスしきっているわけではない)

「ざざざざ」という黄金のメロディは再び幕を張ってホヤの体をアイフオォオーンXにする。

「嫌な比喩だねい」

田中くんは宮澤賢治の影響を受けて呟いた。エエ、そうです。「雪渡り」だね。「僕の作った歌だねい」だねい。

三重を通過したあたりで、私は犯罪者に会うつもりが、残念ながらいなかった。幼少期を思い返すといつだって後悔する。ああ、その辺の人に死体と血の滴るナイフでもわたしゃあーよかった。

そしていずれかの村人がしらないかおをしたとき、ホヤは順繰りにマウンテンバイクやら日本刀やらを突きつけ、「オッホッホイ」と笑ったものだった(もちろん全てトミカトミカプラレールの世界での出来事である、本当にやったら今頃私たちが三重県の来訪者にお辞儀せねばならなくなる)。

「シャーク」

英語の勉強に精を出し、おとといの小テストに備える田中くん。

「スポーツ」

「正解」

ウズベキスタン出身のホヤはドイツから来た日本生まれロシア育ちの生粋のスペインボヤなので、英語が得意なのだ。さっきだって、ヒエログリフで会話をしていたほどだ。まあ、気にするな。なにか君がしんりにきづこうがしったこっちゃない。田中くんのテストの結果だけが、私の持つ唯一の興味です。

「サービス業界から父さんが撤退したそうだよ」

「倒産と云ふこと哉??」

「はははははははははははーはははははははははは」

すっかり二人はテストを忘れてギッシギッシ牛車の上で談笑ワールドの入場券大人1名ホヤ1名を購入している。

「ボイインとバクハツシソウァネ」

「絶妙アレンジの夢野久作やめろ」

「怪談怪談。妖怪おばけェ…。ヒェエッと来そうだね」

「だから夢野久作やめろって」

私もツイjoinしてしまう、、

「夢野久作出るのに英語できねーのかい」

「I can't speak English very well 'cause I can't talk.」

「ォヤ、嘘つきボヤ」

百済ん駄洒落んで喜ぶん私達ん。

そして香川県坂出市に差し掛かった頃、ドーナツを30個落下させる儀式、いわゆる遽天叢雲剣を見ることができた。まあ珍しくもなんともない。だって、遽天叢雲剣にわかあめだもの。

というわけで、私は札幌に杮落としで腓返りした。

私たちの言葉に魂はないかもしれない。でも、旅は人の心に寄り添うだろうし、私もカーペンターも皆しゃらららシュリンプえび魚魚魚うぉうおおーであろうし、誰にも見えない視界が君を待っているだろう。少なくとも、二年間生きてれば。

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