第7話 研究者
イヤホンから耳に流し込まれるアラーム音。
このラボNo.608の扉の脇に設置した
センサーからの警報だ。
時刻はAM4:15。
こんな時間に「彼」が来るとは想定外だけど
私にとっては好都合。
なにしろ、このボトルについて
問いただすチャンスがやって来たのだから。
私は2本のボトルを手に取り
バックパックへ突っ込んで
応接スペースへ戻る。
「彼」が入って来るのを待ち構えていると
急にバタバタと慌てているような感じで
エアロックゲートの操作をしている様子が
伝わって来た。
応接スペースと通路の角に身体を寄せて
「彼」が飛び出して来るのを待つ。
ゲートの扉が開くのももどかしく
飛び込んで来る「彼」。
私はすぐさま「彼」の背後を取り
左腕を首に回した。
「動くな!」
「彼」はビクリと身体を奮わせたが
私の右手に握られた短針銃が首筋に
当てられているのに気がついて
おとなしくなった。
「彼」。
このラボNo.608の契約者、
ロイド・ワーウィックは
ごく普通の体型をした21歳の男性だ。
身長170cm、体重は70kgほど。
眼鏡をかけていて、頭髪は栗色。
このトライウェイでは
どこにでもいるような青年にしか見えない。
そんな「彼」が
恐るべきウィルスの開発者なのだから
人は見かけに寄らぬものと言う言葉は
真実よね。
「君は誰だ?」
ちょっと掠れた声で発せられた質問。
「残念。
質問はこちらからの一方通行なの。」
私は彼をソファーまで連れていき
少し乱暴に座らせた。
彼の正面に回り
短針銃を向けたまま見下ろしてやる。
彼はこちらの荒事に慣れた雰囲気を
察したのか、おとなしく座ったままだ。
「何が目的なんだ?」
「だから、あんたに質問する権利はないの。
こちらの質問に答える事しか許可しない。」
尋問は最初にお互いの立場を明確にしないと
上手くいかない。
だから私は短針銃を彼の額に押し当てる。
「でも。その質問には答えてあげるわ。」
尋問の幕開けの一言。
「あんたの計画を阻止する事よ。」
ロイドの目が見開かれた!
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