第6話 二つのボトル

研究室には不釣り合いな家庭用小型冷蔵庫。

その中には、この惑星トライウェイの

農業生産を壊滅させる

「麦結実阻害ウィルス」が

銀色のボトルに詰められて保管されている。


それが私の受けたターゲットの説明だ。


確かに本数については何の情報もない。

だがウィルスと言う微生物を

散布するのに必要な数量を詰めるのに

大量のボトルを必要とするかと問われれば

「否」でしょ。


危険なブツを持ち運びしやすく

目立たないようにするには

まず数を減らすことが第一になるだろう。

だからボトルの数は1っと考えるのが

妥当よね。


ちょっと大きめの水筒なら持っていても

誰も不思議に思わないし。

だけどそれを2本も持っていたら

不思議がられるわ。

注目を集めるとまではいかなくても

目撃したら印象に残るのは間違いない。


犯罪者やテロリストは目立つようなことは

しないものだ。

実行の瞬間まではね。


私、以前はテロリストだったから

その辺の心理や行動原則は

分かってるつもり。


なのにボトルが2本。

どういう事なのかしら?


困惑しながらボトルを観察してみる。


直径15Cm・長さ25Cm。

ステンレス製大型水筒くらいのボトルが

2本。


水筒と同じように上部から7・8Cmのところに

分離出来ると思われる筋が入っている。


そして上面にはビニールテープが貼られていた。

一つは赤。もう一つは緑。


これは何を意味するものなのかしら?


そこまで考えた時、イヤホンからピピピと

アラーム音が響いてきた!


このミッションは隠密に行うことが

原則だけど

誰かに発見されると言う可能性を

排除しているわけじゃない。


念には念を。

だから私は廊下のドアの脇に

ボタン電池のような

人感センサーを取り付けてきた。

このラボNo.608へ近づく者が

現れたときには

こうして知らせてくれるようにね。


時間を確認するとAM4:15。

ちょっと時間をかけすぎたかな?

でもこんな早朝に「彼」がやって来るなんて想定外だわ。

研究者特有の気まぐれと言うヤツなのかも

しれないけど…


ちょうどいい。

このボトルについて「彼」尋ねる事に

しましょうか。








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