第4話 ラボNo.608
屋上から侵入した私は
ゆっくり階段を降りて行く。
7階はラボが4部屋。
残りのスペースは軽食とドリンクの
オートベンダーが備わったラウンジ…
と言うより
どこかの工場にある休憩スペースだわね。
現在時刻は午前3時40分。
照明も省エネモードで薄暗いフロアを
横目で見ながらさらに階段を下り
6階へ降りて行く。
今回のターゲットはラボNo.608。
そこにこの惑星の農業生産を壊滅させる
ウィルスが保管され
バラ蒔かれる時を待っている。
私の任務はそれを奪取し持ち帰ること。
できればウィルス生産プラントも
破壊したいけど
想定外の漏出などのリスクを考慮して
破壊は行わない事になっている。
6階に到着。
階段から右手に向かって廊下が伸びていた。
照明はやはり薄暗く、廊下の突き当たりまで
ぼんやりとしか見通せない。
廊下の両側に扉が並び、その扉にナンバーが刻まれたプレートが取り付けられている。
使用者の名前などは無く
ただナンバーだけが書かれているのだ。
理由?
ここの利用者は研究者だもの。
彼等がなにより恐れるのは
自分の研究成果を盗まれる事。
それを防ぐには自分の研究場所を
秘匿しておくのが一番確実な方法だ。
だから、わざわざ自分の名前を貼り出して
場所を特定されるような事はしない。
管理する側も誰がどこに入っているかは
自分達が知っていれば良いことなので
部外者に公開しなくても問題無いわよね。
さて、私は招かざる侵入者なので
それらしく行動しなくてはならない。
廊下の照明についてる人感センサーに
引っ掛からないように
左側の壁づたいに張りついて横向きに
進んで行く。
ラボNo.608は階段から一番近い扉。
僅か20mほどだけど
慎重に進まなければならない。
もしセンサーに掛かれば
廊下の照明が点灯して
私の姿が丸見えになる。
当然、設置してある防犯カメラにも
バッチリ映るわけよね。
マズイなんてものじゃない。
まさに「ヤバい!」
とにかくターゲットを奪取するまでは
警備に見つかる訳にはいかないのよ。
5分ばかりかけて扉に着いた私は
ベルトに着けてある大きめのポーチから
鍵開けツールを取り出す。
扉の鍵はごく標準的なカードキーだった。
このツールは鍵の電子的な情報を読み取り
その場で合鍵を作ると言う優れもの。
もちろん市販されてはいない。
私の属するW.I.C.Hの開発した
特殊装備なの。
ものの2分程で合鍵は完成。
スリットに鍵を差し込むと
シュッと扉が右へスライドして
私はラボ内部へ侵入した。
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