3:この世界に魔王はいない。
夜、サキはバルコニーで寝る前の歯磨きをしていた。
ちなみに彼女が目を覚ましたのは夕方なので、まだ数時間程度しか経っていない。
そもそも召喚されてから目覚めるまでにも数日間ずっと寝ていたのである。
驚異の九十時間睡眠から目覚めた五時間後。
……サキは既に寝る気満々だった。
寝る子は育つ。
勇者様は成長期の真っ只中なのである。
そんなアホの子を遠くから見る二つの視線。
白い仮面をつけた男とニット帽を被った老人……、ユウを見ていた例の二人だ。
別の塔の上に乗った二人の姿は、やはり光学迷彩の効果によって離れたところからは見えなくなっている。
仮面の男は手のひらサイズのルーペを通してサキを観察していた。
「なあ、じいさん。」
「なんじゃ?」
「ヒロイン力ってみんなどれぐらいなんだ?」
「ヒロイン力?」
「いや……、なんかヒロイン力が3とか表示されるんだが……。」
「何じゃそれは? ちなみに数字は全部偏差値表示じゃぞい」
偏差値というのは50±30、つまり20~80の間に全体の99.8%が入ると言われている。
だから偏差値80超えは逸材、20未満も逆の意味で逸材である。
偏差値3といったら、理屈の上では数百万人に一人ぐらいのとんでもない逸材だ。
普通なら遭遇することすら叶わない存在である。
そんなバカなことはないだろうと思った老人も横からルーペを覗き込んだ。
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名前:サキ=アイカワ
種族:人間
階級:勇者
強さ:まあまあやな
ヒロイン度:ヒロイン力3。ヒロインだなんてとんでもない
アホの子レベル:伝説を超える逸材
称号:メインヒロイン(笑)
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「……本当に偏差値3じゃな」
「いや、そんなことありえるのか? 絶対に壊れてるだろコレ。メインヒロインに(笑)とかついてるし」
仮面の男は戸惑った様子でルーペを確認した。
だが少なくとも外側に大きな傷は見られない。
「そうかのう……?」
老人はループを受け取ると、試しにそれで仮面の男を覗いてみた
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名前:ジノーヴィー=グラン
種族:造魔
階級:魔王直属
強さ:限界突破ァッ!
苦労人レベル:苦労人パワー82。お前もなかなかやな
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「……お前さんのは普通に表示されるのう。別に壊れてはおらんようじゃ」
苦労人としての偏差値が82というのもなかなかに剛の者なのだが、老人はそれを完全にスルーした。
「どれどれ。」
仮面の男ジノーヴィーはルーペを受け取ると、今度は老人を覗いてみた。
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名前:ゴア=シフル=ホフ
種族:妖精
階級:魔王
強さ:ありえんやろこんなん。何者やお前
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「確かに普通に表示されるな。ということはつまり……。」
「まあ……、そういうことじゃのう」
二人は改めてサキを見た。
「メインヒロイン(笑)……。」
「初めて見る称号じゃな」
二人とも、なんとも言えない微妙な表情になった。
ゴーストロッドリベレイション ゴースト編 Phantom's Ghost 刺菜化人/いらないひと @needless
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