第20話 結末

かくして、天選教にまつわる一件は終息した。

天選教の教主含めた上層部は遥が呼んだ警察に連行されていった。彼らは取り調べに対して、素直に応じているらしい。今回の事件で犠牲になった信者も多く出たが、それは警察がどうにか誤魔化すようだ。

一方、一部の司祭や神父が姿を消していることが判明していた。彼らは真月たちが怪物を相手取り始めたときには、無事な姿が確認されているので恐らくコラプスの手のものではないかと推測される。捜索はなされたが、当然見つかることは無かった。

GMUは、本来の依頼である儀式を解明する資料を手に入れており、一応依頼は達成扱いされている。

その後、怪物の攻撃を受けた桜賀と直政は念のため病院で大掛かりな検査を行った。結果、桜賀の左腕のヒビ以外は特に大きな怪我もなく、潜入作戦から一週間。


この一件で五人全員、力不足を感じるところがあり新たに修行を始めていた。

日向はナイフでの戦闘訓練。苦手な接近戦を中心に猛特訓している。

桜賀は攻撃力の強化。手数を増やしても倒せない相手にはやはり一撃の攻撃力をあげるしかないと、試行錯誤していた。

遥や直政は白兵戦や一対一の戦闘訓練、室内戦闘などの課題を見つけ、暇があれば修行している。

ただ、遥は潜入時の判断ミスに責任を感じて落ち込んだ様子が見られた。イザナの影響があったとはいえ、仲間を危険にさらしたのだ。誰かの命が失われる可能性もあった。しかし、四人の誰も遥の責任とは考えていないと主張し、ようやく元気を取り戻し始めてはいる様子だ。

真月は体力強化に能力制御、ようやく届いた武器での戦闘訓練と大忙し。

慌ただしくも皆、日常生活を取り戻し始めていた。


「真月の覚醒した力は飯綱いづなのもので間違いありません。未来予知とまでは行きませんが、それに近しい力です」

調査部フロアの部長室。そこに竜胆の淡々とした声が響いた。

竜胆が尾坂に報告しているのは、真月の能力についてだ。潜入作戦時、天選教が生み出した怪物との戦闘で目覚めた真月の力。飯綱……管狐とも呼ばれる狐の妖怪の能力。

真月は見た目こそほとんど変わらないが、霊力による予言や予知の様な……直感力が備わった。怪物との戦闘で大きな怪我もなく、攻撃を回避し続けられたのもこの力のおかげである。

「ただ……もしかすると、もう一、二種類混ざっている可能はありますが」

「…そうか。他に何か分かったことはあるか?」

「はい。混成獣キメラであるためか、完全な獣化が出来ないかもしれません」

竜胆が告げたのはあくまで可能性の話ではあるが、混成獣キメラとして混じりあった因子は獣化している際は互いに影響し合い、完全に獣化するのを邪魔しているというものだ。

「…だが、可能性の話ならば気に留めておく程度で構わない」

真月が完全に獣化できないことは大きな問題ではないので、尾坂はそのことについては気に掛ける程度に決めた様だ。

「これからも社員の健康管理を頼む」

「ええ。では失礼します」

竜胆が部長室から退出すると、尾坂は懸念事項が増えたことに大きくため息を吐いた。





「ちっ!見つからねえ」

銀髪の青年は目当ての相手が見つからず苛立っていた。

かつて住んでいた場所はもぬけの空。周囲に聞き込みもしたが、誰も探し人のことを知らず、八方塞がり。

「ほんとに、どこ行ったんだ……………真月」

男は空を見上げ、悲しげに顔を歪めた。




一章完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る