第3話
その日から、私は彼から一時も離れなかった。
朝登校するときから、下校する時まで。
昼食も、休み時間も、掃除時間も。
ずっと彼と一緒だった。
そのために私は、彼以外のすべての関係を絶った。
仲の良かった友達は、最初はとても心配してくれたが、次第に私を気味悪がるようになり、今では後ろ指までさすようになった。
それでも私は構わなかった。
私にとっては彼が全てで、彼が側にいることが一番な幸せだった。
最初は戸惑っていた彼も、献身的な私の様子に少しずつ心を開いてくれた。
少しずつ笑顔や口数が増え、そんな彼を見て、私の心も満たされていった。
私の幸せとは裏腹に、私を取り巻く状況は次第に悪くなった。
もともといじめられていた彼に加えて、私もいじめの標的になった。
最初は物がなくなるくらいなことだった。私と彼が、お互いのことしか見えなくなるほど、いじめはエスカレートした。
あるときは持ち物のほとんどに「死ね」と落書きされた。
またあるときは画鋲をロッカーに詰め込まれた。
それでも、私はまったく気にしなかった。
彼と一緒にいれれば。それで幸せだった。
いや、ちがう。
私は最初から私のためだった。
私が満たされるため。
彼を使って、かわいそうな彼をお世話することで、わたしは満たされていた。
惨めでかわいそうな彼のそばにいる事に、酔っていた。
そんな日々も、ある事件をもって終わりを迎えた。
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