第2話

ある日、私は放課後の掃除当番で、教室のゴミを部室棟の裏のゴミ捨て場に捨てにいくところだった。


校舎の裏手に回ったとき、男子生徒に囲まれて、どこかに連れて行かれる彼の姿が見えた。


私はこっそり後をつけると、彼らは古くてどこも使っていない、部室に入っていった。


嫌な予感がした。私は小走りで、部室の裏の窓のところに行って、中の様子をうかがおうとした。

そのとき、グループの男子生徒らの嘲笑の声が聞こえてきた。


「おい、てめえ、気取ってんじゃねえよ。」

「何にもしゃべんねえで、かっこつけてんのか?」

「こいつ、何しても喋んないんじゃねえの?」


大変だ。

私は助けを求めに走ろうとした。


瞬間足が止まった。

心臓がバクバクなっている。

怖くて動けなかったわけではない。


私の頭の中は彼でいっぱいだった。


彼が囲まれている姿、これから受ける暴力。


そんなことを考えていると、驚くことに、私はたまらない興奮を覚えた。


案の定、中から暴力が行われているであろう声や、音が聞こえてきた。


私はそれを聞きながら、こともあろうに、自慰をした。


彼が少しずつ傷だらけに、ボロボロになっていく姿が、中の音からありありと想像できた。


そしてそれを思うと、自分の中から、いろんな感情が溢れてくるようだった。


かわいそう。

大好き。私が守ってあげる。


私はスカートの中に手を入れ、へたり込み、いつのまにか声を上げて感じていたが、中の声でかき消された。


私が果てるのと、グループの男子生徒らが表から出ていくのが同時だった。


私はしばらく呆然としていたが、我に帰ると急いで彼を助けに行った。


「ゆうとくん!」

「近藤さん?、、」


中にいた彼は想像通り、好き放題にされ、ひどい有様だった。

制服のシャツは破れ、靴は無くなり、

顔も殴られた後が青く残っていた。


それでも、彼の透けるような儚さは、一層増したように見えた。


私の目からは涙が溢れた。


悲しいのではなかった。なんて愛おしいのだろう。なんて美しいのだろう。


私は彼の前にひざまずくと、彼の頬に手をおいた。


「大丈夫だよ。これからは私が守ってあげる。安心して。」


そう言って私は強く彼を抱きしめた。

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