僕のちっぽけな冒険譚

YuU

ちっぽけな冒険譚

 この物語はとある円盤付き特装版の本を買うために奮闘する男子高校生三人の冒険譚である。


ーーーー 


「じゃ!僕は行ってくるよ!」


 僕、神田 夏樹は台風により学校の窓が震えている今日。僕は冒険をする。


「おい!待て!…夏樹てめぇ、一人で行くつもりか!?」


 この口調が悪いのは金田 真司。我が同志である。物凄く身体が大きい。


「そりゃないよ!僕達の仲だろ?」


 こいつは真木野 海斗。我が同志でとても優しい。


「あぁ。これ以上、君達を巻き込むわけにはいかない」


 これ以上は危険だ。海斗や真司を危険な場所に送り込むなんて無理だ!


「おい夏樹。俺達は同志だろ?行かせてくれ。頼む」


「僕もだよ!どこまでも付いて行くよ!」


そうだった。こいつらは同志だった。俺はなんて大馬鹿者なんだ。


「あぁ。ありがとう、我が同志よ!さぁ、行こう!」


僕の言葉と同時に学校の廊下を走り出した。


「まずはチャリの確保。そして全速力で駅まで走り、駅から本屋が近くにある駅まで行き、そこから全速力で走り『とある物』を買う。これが今日という日のために練りに練ったルートだ。良いか?」


 僕は廊下を走りながら真司と海斗に確認した。


 「良いと思うぜ!」

 

 「うん!いいと思うよ!」


確認し終えたら駐輪場に着き、慣れた手つきで鍵を開けそのまま僕、海斗、真司は全速力で駅まで向かった。


 

 その時、トラブルが起きた。それは…



 「やばい!信号が点滅してる!」


 青信号が点滅して赤信号になりかけていたのだった。しかも

 

 「ここ。一番赤信号が長ぇとこじゃねぇか。おいどうする?夏樹!」


 「このまま突っ切るぞ!みんな準備はいいな!?」


 「「おう!」」


 「「「うぉーーー!!」」」


くっクソ!このままじゃギリギリ間に合わない。どうすれば……ハッ!


 この時、夏樹は二つの選択肢があった。


 一、このまま赤信号に変わっても突っ切る。


 二、このまま諦めて信号を待つ。


  諦めるなんてダメだ!


 「このまま突っ切るぞ!」


 神様の悪戯か…また僕達に試練を与えてきた。


 ガシャーン!!


 その音は後ろから聞こえていた。まさか…


後ろを見ると自転車と共に倒れている海斗がいた。


 「お、おい!大丈夫か!?海斗!」


 僕はチャリを止め、海斗の方へ向かった時、海斗が言った。


 「来るなーー!」


 その時、海斗から発せられた声に僕と真司は驚いた。


 普段、静かで叫ばない海斗がこんな声が出せるとは思っていなかったからだ。


 「僕の自転車のタイヤはパンクしてしまった。僕はもう無理だ」


「海斗?諦めるんじゃねぇーぞ!俺達は同志じゃねぇか!一緒に行くんだ!」


 真司が海斗に向かって叫ぶと海斗は何も言わず悔しそうな顔をしていた。


 「海斗………。真司行くぞ。このままじゃ間に合わなくなる」


 「おい夏樹?海斗を見捨てるのか?」


 「俺だって見捨てたくねぇーよ!だけど、このままだと散っていった海斗が報われない。それならせめて俺達が買いに行った方が良いだろ!」


 「クッ!」


  僕と真司はそれ以上後ろを見なかった。その後、全速力で走りギリギリ青信号に間に合った。


 そして全速力で走り続ける事、約二分。またトラブルが発生してしまった。それは


 「うっ!こっこれは!」


 それは今走っている小さな道に女の壁が出来ていた。いや実際には一列で女がチャリで走っていたのだ。


 「おい!どうする夏樹!このままじゃ通れねぇーじゃねぇか!」


 「あぁ。だが解決策があるが…」


 「おいなんだよ!勿体ぶらなくて良いから言えよ!」


 「それはあの女の一列の端に細身の男一人が通れる空間がある。だが…


 僕は問題無く通れるが真司は多分通れない。真司は身体が大きいからあのサイズの隙間から出ることが出来ないのだ。


 「…ふっ!そういうことか。行け!夏樹!俺を置いて行け!」


 「何を言っている!俺達でいくんじゃないのかよ!」


 「俺だって行きてぇさ!でもよそのせいで計画がダメになるのであれば仕方ねぇーじゃないか!」


 「……分かった。この計画、絶対成功させるとここに誓おう」


 「ふっ!なら行け!」


 その声を聞いた後は女の壁を越え、そしてそこでも何度も災難に巻き込まれ、クタクタになりながらも本屋に着いた。


 そして店内に入り『とある物』を探していたが見つからなかったので、僕は店員さんに尋ねでみることにした。


「『俺の妹が天使すぎて困る』のドラマCD付き特装版はありますか?」


「申し訳ございません、お客様。現在ここでは取り扱っておりません」


「え?」


 そして僕はここで僅かながらに残っていた体力が消えてなくなり倒れたので救急車に運ばれていった。




              END
















 


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕のちっぽけな冒険譚 YuU @mugifuwa1415

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ