第120話〜真・最終決戦! 守れ、ニャンバラを〜

 

 神殿に到着すると、そこは変わり果てた風景になっていた。

 柱は折れ、所々天井に穴が空き、崩れ落ちている。これまでに起きた災害のせいだろう。


 神殿の奥——ネコの神の像のある場所に、ボクらは再び辿り着いた。

 神の像の足元に、グレさんの姿がある。目が赤く光り、こっちを睨みながら立っていた。

 グレさんが再び、ミラに乗り移られているようだ……!



「ソールさん! 話すなら今だぜ!」


「ああ!」



 ソールさんが前に出て、グレさんに近づいていく。



「嫉妬と競争の神、ミラよ! ……太陽の子孫として、太陽の神に代わりお伝えします!」



 グレさんは少し間を置き、口を開いた。



「太陽の神の子孫だと……?」


「あなたの神としての役割は、終わったのです! 天界にお帰り下さい! あなたは十分に、この世界に於いての役割を果たされました。嫉妬と競争の心で、地底のネコ文明を発展させるという、役割を果たされました! ……しかしそれ以上やると、この星を滅ぼしてしまいます!」



 ソールさんはそう言いながら、グレさんに〝菊花の剣〟を見せた。



「……貴様が太陽の子孫だというのは本当のようだな。だがもう遅い。世界は滅びる運命なのだ」


「嫉妬の感情は、膨らみ過ぎると、自分さえ良ければいい……そのような者を沢山生みます。そして、周りの者を犠牲にし、勝ちを奪ったところで、残るのは虚しさだけです。そんな事のために……我々は生まれた訳ではないのです!」



 ソールさんは必死に、ミラに取り憑かれたグレさんを説得する。

 ……が、グレさんの様子がおかしい。



「我の教えは、間違っていたというのか? なら、一体……グゴゴ……」



 な、何だ⁉︎ どうしちまったんだ!

 グレさんの身体が赤く光り、急に膨らみ始めた。



「どうすレバ、ヨクァットゥイウノォォォダァァアアアアアアアア‼︎」



 何とグレさんがみるみるうちに巨大化し、神殿の壁と天井を突き破った。

 崩壊するネコの神の像。ボクらは必死でその場から離れた。



「クソ! 何だってんだよ! 化け物め!」


「みんな、離れるんだ! 危険だぞ!」



 巨大化したグレさんが大きく息を吸い込むと、口から青白く輝く光線を吐き出した。

 光線は近くの塔に炸裂し、爆発。塔は瞬く間に木っ端微塵になってしまった。

 何て威力だ。狙い撃ちされたら、一瞬でボクらは黒焦げにされちまう——!


 ボクらは崩れ落ちる神殿から脱出し、近くの森の中に身を隠した。

 巨大化したグレさんは、ゆっくり首を振りながら、ボクらを探している。

 ボクはその間に、ステータス分析を試みた。



 破壊と殺戮の狂獣きょうじゅう グレ

  Lv.750

 グレー♂

 大怪獣


 属性……陰


 体力 145600

 魔力 10806

 攻撃力 14196

 防御力 11212

 敏捷性 8560

 魔法力 9123


 耐性……無し

 弱点……陽


 超必殺……

 ヒートバスター



 狂獣と化したグレさんは、ボクらを探すのを諦めたのか、今度は街の方へと向かっていく。

 進みながら口から熱戦を吐き、もう既にボロボロのニャンバラの街を、火の海に変えていく。

 避難しているみんなの悲しげな顔が、脳裏をよぎった。



「嫌や、ウチらの故郷をこれ以上壊さんといてや……。嫌やあ……。うわああん……」



 スピカがボクにギュッと抱きつき、そう言った。

 涙が、ボクの手を濡らす。



「大丈夫だって。絶対ボクらは負けない。信じろ。辛かったら一緒にいてやるから」


「……うん!」



 一刻も早く、狂獣グレを止めなければ。

 ソールさんは手を天にかざし、叫んだ。



「行くぞ! 超神合体‼︎」



 守護機神たちが飛来し、ボクらは搭乗する。

 その後合体を開始し、瞬く間に〝超星機神グランガイア〟の姿になった。



「ライムさん、ひとまずグレを止める。いいな?」



 ソールさんが問うと、ライムさんは少し躊躇いながら、首を縦に振る。



「仕方あるまい。だが殺すんじゃねえぞ」



 その言葉を確認してから、暴れ回る狂獣グレに狙いを定め、ボクらは再び、〝超星機神グランガイア〟唯一にして、最大最強の必殺技の名を叫んだ。



「グランガイア・メテオスウォーム‼︎」



 無数のレーザー、弾丸が狂獣グレを襲い、瞬く間に爆発と黒煙に包まれる。同時に狂獣の痛々しい悲鳴が、漆黒の闇に染まった空にこだました。



「グレェーーーーッ‼︎」



 大声で叫ぶライムさんの声が聞こえ、ボクは苦々しい思いを噛み締めながら狂獣グレの方を見た。

 煙が晴れていくと、そこには地面に倒れ伏し、動きを止めたグレの姿があった。

 ……だが。



「グォオオオン……。我が魂は……痛くも痒くも無い……!」



 ボロボロに傷付いた狂獣グレの口からその言葉が発せられると、全身が赤黒い光に包まれる。瞬時に傷が回復し、狂獣グレは再び立ち上がった。



「そんな、グランガイア・メテオスウォームが通じないとは! どうすれば……」



 このままだと、ニャンバラの街が完全に灰になってしまう。何とか手立てがないか、ボクらは必死で考える。

 ……その時だった。

 黒い空に、多数の戦闘機が現れた——ニャルザル軍だ。



「あれはニャルザル軍! 何かアナウンスしているぞ。聞き取れるか?」



 超星機神グランガイアをニャルザル軍の方に近づけ、ボクらは耳を傾けた。

 ニャルザル軍最高司令官オレオの声が、聞こえてきた。



「我々ニャルザルの民は、もはや神をも超える力を手に入れたのだ。科学技術こそ至高なのだ。あの暴れ回る怪物に、〝ニャークリアー・ボム〟の力を見せつけてやれ! 行くぞ! 砲撃用意……!」



 ニャークリアー・ボム——!

 ダメだ! そんな事をしたら——‼︎

 や、やめろぉぉぉーーーー‼︎



「……発射‼︎」

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