第119話〜神技伝授〜

 

「もう一度神殿に行き、ミラに祈るのだ。新たな時代に、新たな教えと共に、我々が生きる事のお許しを得られるよう……」


「ライムさん、分かった。もう一度ミラと話せる可能性があるならば、それに賭けよう。行こう、神殿へ!」


「おう!」



 ボクらは再び、あの不気味なネコの神の像のある神殿へ行く事になった。ダメ元でも、話せばミラも分かってくれるかも知れねえ。

 ライムさんが言うには、グレさんはあれから、ずっと神殿で祈りを捧げているらしい。


 出発準備が整い、ボクはミランダを呼ぼうとした。

 その時——。



「誰だ? 誰か、僕を呼んでる?」



 ソールさんが周りを見渡しながら言った。

 が、他にソールさんを呼んでるネコは誰もいない。

 マーズさんは不審がる。



「ん? 何言ってんだソール、早く行くぞ!」


「いや、ちょっと待ってくれ!」



 ……おい待てよ。

 ボクにも何か、聞こえる。

 その声は耳にではなく、ミランダと同じように頭の中に響いてくる感じだ。



『ソール……我が子孫よ……』



 ボクは周りを見渡した。が、声の主はどこにもいない。

 声は続く。



『愛する我が子孫、ソールよ……。ようやく我が声、届いたか……。どうか、ミラに伝えてくれ……。そなたの役割は、終わったのだと……。天界に帰って来るのだ、と……』


「誰かが……、ミラに伝える事がある、って……」


「何言ってんのソール、頭でも打ったの⁉︎」


「誰もいないじゃないか! 何も聞こえないぜ?」



 どうやら、ソールさんとボク以外、その声は聞こえないようだ。



「ソールさん、ボクにも聞こえるぞ!」


「ゴマくん! 共に耳を傾けよう!」



 部屋にいるみんな、ボクらを見て頭にハテナマークを浮かばせている。ライムさんは部屋の片隅に座り、ひたすら黙っている。

 ボクはただただ、謎の声に耳を傾け続けた。



『私は古より生きとし生ける者を照らす者……太陽の神である……。ソール、我が子孫よ。聞いておくれ』


「ぼ、僕が、太陽の神様の子孫……?」


『ミラは我が同志……。我が声を伝えてくれ。そなたの役割は終わったのだ、と……』



 ソールさんはついに、太陽の神様から直々に、ソールさんが〝太陽の子孫〟である事を伝えられたようだ。

 ……つっても、どこまでが本当の事かは知らねえが。



『もし、ミラが我が声の聞く耳を持たぬなら……神技〝パルフェ〟を……お主とその仲間たちに授ける。この神技で全員の力を一つにすれば、ミラの力を封じる事が出来る』



 パルフェ? 何だそりゃ。

 ミラの力を封じる神技……?



「しかし……太陽神様。あの時、どんな攻撃を当てても、ミラ自身にはダメージは及ばなかった……。依り代のグレさんだけが、どんどん傷付いていきました……」


「そ、そうだ! そのパルフェとやら、本当に効くのかよ!」



 ボクもソールさんも、太陽の神様に問うてみた。



『〝パルフェ〟は、唯一、神を裁く事の出来る秘技である。しかしそれは、もはや最後の手段。使用すると、技を受けた者には命の終焉が訪れ、使用した者も技の反動で、命が絶たれるやもしれぬ』


「何だと……⁉︎」



 〝パルフェ〟——。

 これを使うと、ミラの力は封じられるが、グレさんも、ボクらも、死ぬって事か……⁉︎



『我は地上世界の救済に行かねばならぬ。どうか我に代わって、ミラに我が声を伝えて欲しい。出来るなら〝パルフェ〟を使う事なく、この災いを終わらせてもらいたい……。頼んだぞ、我が子孫、ソールよ』


「……分かりました。ありがとうございます」



 ……声が聞こえなくなった。



「ソール! いつまでボーッとしてんだ、神殿に行くぞ!」


「そうよ! 急がなきゃいけないのに何してんのよ!」


「……あ、ああすまない!」



 ……絶対、〝パルフェ〟は使わせねえ。

 太陽の神様の声をしっかり、ミラに届けてやる!


 プレアデスにはもう一度避難所に残ってもらい、ボクらはワープゲートをくぐり、神殿へと出発した。

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