第115話〜地底の大海竜〜

 

「海の厄災竜カラミティドラゴンが目覚めた原因は絶対、ニャルザルの、地下ニャークリアー実験のせいじゃねえか!」



 マーズさんが顔を真っ赤にして言う。



厄災竜カラミティドラゴンのいる場所を中心に、海上に巨大な波がいくつも発生している。このままだと、ニャンバラの街が波に飲み込まれてしまうぞ! 海岸沿いの住民に、すぐに避難するよう呼びかけろ!」



 ソールさんの指示で、みんな出発準備を始める。


 ボクらは2チームに分かれた。

 避難誘導組にムーンさん、マーズさん、マーキュリーさん、ライムさん。

 厄災竜カラミティドラゴン討伐組にソールさん、ヴィーナスさん、スピカ、フォボスさん、そしてボク。


 フォボスさんは頭の回転が速いので、ボクと一緒にアストライオスに搭乗し作戦指示を出してもらうことにした。

 なるべく大匹数おおひきすうで作戦を実行したいとの事なので、今回避難所に残るのは、プレアデスだけだ。



「すぐに出発だ! それぞれ、よろしく頼むぞ!」


「おう‼︎」



 ♢



 二手に分かれるので、スター・マジンガ・改は一度解体し、それぞれの守護神マシンで仮設基地を出発する。避難誘導組は海岸近くの街へ、厄災竜カラミティドラゴン討伐組は、海岸から遥か沖を目指す。

 厄災竜カラミティドラゴンのいる場所はソールさんが把握しているから、ボクらはついていけばいいだけだ。


 海が見えてきた。真っ黒の空の下、海面は荒れ、波立っている。

 しばらく飛んでいると、フォボスさんが遠くを指差して言った。



「あそこだ。海上で暴れている竜がいる」



 ボクにはそれが見えなかったが、フォボスさんは目がいいらしく、遥か遠くから厄災竜カラミティドラゴンを発見したようだ。



「みんな、厄災竜カラミティドラゴンの居場所が近いらしいぞ!」



 すぐさま、ボクは通信でみんなに知らせる。

 フォボスさんが指示する方向にもう少し近づいた所で海面を見ると、巨大な波しぶきを上げて何かが暴れている。



「グォォォオオオオオオン……!」



 コイツが、海の 厄災竜カラミティドラゴン——!

 その竜は、顔だけで街1つ分あるぐらいのデカさだった。

 遥か向こうで、巨大な尾ひれが海面をぶっ叩き、空高く波しぶきが上がっている。



『で、でっか‼︎ ノアやガイアドラゴンの比やないで! ゴマ、早よいつものあれやって!』



 スピカからの通信。声がデカい。



「そんなデケエ声出さなくても聞こえてらあ! ……ステータスだな、任せろ!」



 大海竜だいかいりゅう・ニャンバリヴァイア

 海竜

 Lv.250


 属性……水


 体力 150750

 魔力 965

 攻撃力 10250

 防御力 7622

 敏捷性 4100

 魔法力 4515


 耐性……火

 弱点……風


 超必殺……

 大海嘯だいかいしょう



 すぐにボクはみんなにステータスを伝えた。

 こうしてる間に、大海竜ニャンバリヴァイアの周りで巨大な波が巻き起こり、拡がっていく——。



「ソールさん! めちゃくちゃHPが高いぞ! 簡単には倒せねえ!」


「まず、この波を止めさせるんだ! この波は津波となって、数分後にニャガルタやニャルザルの街に押し寄せ、街を破壊し尽くしてしまう!」


「何だと⁉︎」


「ムーンたちが、その前に住民を避難させてくれる事を信じよう。津波というのはあの時の大火災と違って、一瞬で街を破壊し、もし飲み込まれるとあっという間に命を持っていかれてしまうんだ!」



 大変だ。こんな恐ろしい奴が目覚めちまっただなんて——!

 ボクはすぐさま、ミランダに地上世界の様子を確認してもらった。



「ミランダ、地上でツナミとやらは起きてないか?」


『津波はまだ発生してないわ。だけど世界中の海が大荒れで、大型船がいくつも沈んでる。……そのドラゴン、今までで1番危険よ。もし世界中で津波が起きたら、多くの人が死んじゃう。絶対負けないでね!』


「ありがとよミランダ。……クソ、こんなデカイ奴とどう戦えってんだ!」



 大波に巻き込まれないように、少しずつニャンバリヴァイアに近付いていく。

 その時ボクは——ニャンバリヴァイアの巨大な顔の近くで、戦闘機が1機飛んでいるのを発見したんだ。



「何だ⁉︎ あの戦闘機は!」



 打ち寄せる波しぶきをかわし、レーザーをニャンバリヴァイアの顔に浴びせながら、思わずボクは言った。

 次にフォボスさんが発した言葉に、ボクは耳を疑った。



「あれは……ダイモスだ」


「……マジかよ!」



 あれから行方不明だったダイモスさん——。

 赤いウイングの戦闘機でニャンバリヴァイアの周りを飛び回り、ひたすらレーザーを浴びせ続けている。



「ウロオォォォォォオン‼︎」



 ニャンバリヴァイアが咆哮を上げるたびに、巨大な波が押し寄せる。このままだと、ダイモスさんの戦闘機はいつ波に飲み込まれてもおかしくない。



「ダイモスを助けるぞ! ゴマ、ニャンバリヴァイアの方へ!」


「ちょ、フォボスさん!」


「急げ!」



 ボクは必死に操縦し、ダイモスさんの戦闘機の近くまで飛行した。巨大な波が何度も襲い、ボクはギリギリのところでかわし続ける。



「クソ、これでもくらいやがれ!」



 ボクはニャンバリヴァイアの巨大な目に向かって、レーザーを放った。——命中。

 目をつぶされたニャンバリヴァイアは、ダイモスさんの戦闘機を見失い、程なくしてその巨大な顔を海中に沈めた。

 その衝撃で、巨大な波しぶきが襲いかかる!



「ダイモスの馬鹿者め……!」



 ダイモスさんはボクらに気づいたらしく、機体のライトを点滅させた。ありがとうって事だろうか。



『ゴマくん、ナイスだ! 再びニャンバリヴァイアが浮上して来る前に、一旦ここを離れよう!』



 ソールさんの通信に従い、ダイモスさんの戦闘機を誘導しながら、アストライオスは他のみんなと合流した。


 陸地の方からは、アルテミス、アレス、ヘルメス、そして飛行形態の機獣王レオパルムも飛来、合流した。避難誘導組の、ムーンさん、マーズさん、マーキュリーさん、ライムさんだ。



「みんな! 陸地の状況は?」


「避難は無事、完了しました。でも、津波が街を……!」



 涙声のムーンさん。

 ニャンバラの住民の大切な街は、守れなかった。だが、住民たちの命は、守る事が出来たんだ!



「避難誘導組、それでもよくやってくれた。よし! 全員揃ったところで、合体しよう。行くぞ! スター・マジンガ・改!」



 ソールさんの号令で、再び各戦闘機は合体する。

 パワーアップしたボクらの力で、絶対ニャンバリヴァイアを止めてみせる——!

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