第111話〜大地の機竜〜

 

 遠くに聳える山が、真っ黒な空に向かって火を噴き上げている。

 地面もユラユラと揺れ続け、少し酔いを感じるほどだ。

 地上世界は、大丈夫だろうか……。



「ミランダ! 地上の様子を教えてくれ!」


『日本各地で震度3〜5弱の地震が何度も起きてる。火山の噴火も起きてるわ。浅間山、桜島が噴火して、避難勧告が出てる。あの爆弾低気圧の後だから、人々は大混乱よ。アイミちゃんたちは避難所にいるから無事よ』


「クソ! 早く次の厄災竜カラミティドラゴンとやらを止めねえと! ミランダ、ワープゲートでニャンバラの仮設基地に繋げてくれ」


『分かったわ』



 ボクらは、再びニャンバラの避難所に隣接する仮設基地の作戦会議室に戻り、今後の作戦を立てる事にした。

 急ぐあまり、オレオたちニャルザル軍の奴らはそのまま置いてきちまったが——何か余計な事をしでかさねえか心配だ。



 ♢



 ニャンバラの避難所には、以前にも増してネコたちで溢れかえっていた。

 作戦会議室に戻ると、ムーンさん、マーキュリーさん、それにフォボスさん、ライムさん、プレアデス、みんな疲れた顔で寝転がっていた。ずっと嵐の中、住民の避難誘導をしてたんだもんな。


 小一時間仮眠を取り、みんなの疲れが取れたところで、ソールさんはまたニャイパッドの電源を入れ、今後の作戦の説明を始めた。



「現在、地底世界のそこかしこの山で噴火が起き、地震が頻発している。そして……、ニャンバラ近辺で最も激しい噴火が起きている場所に、生命反応があるんだ。間違いなく、次なる厄災竜カラミティドラゴンはそこにいる。準備ができたら、すぐに向かおう」


「おう!」


「プレアデスくん、ライムさん、フォボスくんは、引き続き避難所での仕事と、まだ避難できていない住民の誘導を任せた!」


「分かったよ! 3匹で分担して頑張るね!」



 次なる厄災竜カラミティドラゴンは、一体どんな奴なんだろうか——。



 ♢



 黒い空は、相変わらず地底世界を覆い尽くしている——。

 ボクはアストライオスに乗り、星光団のみんなと共に、炎を噴き上げる山の方へと向かった。

 飛んでいると、時折地面が揺れているのが分かる。街のあちこちで、火の手も上がっていた。

 炎を噴き出す山が近づく——。



「うわ、近づけば近づくほど、すげえ迫力だな」



 オレンジ色に輝きながら噴き出す溶岩が、目前に迫る。

 みんなで列をなして飛びながら、火口へと向かう。



『みんな! 火口を見ろ! 何かいるぞ!』



 火口の中から、首の長い何かが顔を覗かせ、目を赤く光らせているのが見えた。よく見るとその顔は、機械で出来ているように見える。



『あれが……ドラゴン?』



 そのドラゴンは、火口からゆっくりと這い出て来た。

 何とその姿は、全身が銀色の装甲に包まれた、首の長いロボットのドラゴンだった。漆黒竜ノアと同じくらいのデカさのそのドラゴンは、4本足、首と同じくらいの長さを持つ尻尾、すべて機械で出来ている。

 ボクはすぐさまステータス分析をした。



 ガイアドラゴン

 機竜

 Lv.250


 属性……火


 体力 99456

 魔力 1877

 攻撃力 8006

 防御力 9120

 敏捷性 4272

 魔法力 4516


 耐性……風

 弱点……水


 超必殺……

 グランド・エクスプロージョン



 ボクはみんなに、ガイアドラゴンのステータスを伝えた。



「ソールさん! このまま守護神に乗って戦おうぜ!」


『そうだな!』



 戦闘態勢に入ろうとすると、ガイアドラゴンはこっちに気付き、口を動かした。



「我ガ名ハ、ガイアドラゴン。我ハ地底ノ神ミラノ命ニ従イ、我ガ火ト地ノ力をモッテ、大地殻変動ヲ起コシ……世界ノ全テヲ無ニ還サントス。邪魔立テスルナラバ、貴様ラモ、ココデ無ニ還シテクレル」


『な……! 喋った⁉︎』



 機械とは思えない抑揚のある低い声でガイアドラゴンはそう言うと……、突然目から真っ赤なレーザーをボクらに向けて放ってきた!



「みんな! 気をつけろ!」


『おう! ……よし、全員でレーザーを掃射だ!』



 アポロ、アルテミス、アレス、ヘルメス、アフロディーテ、アストライオス、イーリス——全ての守護神マシンのレーザーを一斉に、ガイアドラゴンに浴びせた。

 ……が、どうやら全く通じていないようだ。



「グガオォォォォン……‼︎」



 ガイアドラゴンが咆哮を上げると、地面が大きく揺れ始めた。

 その時ミランダの声が、ボクの耳の中に響いた。



『大変よ! 太平洋沖でマグニチュード8.2の地震が起きたの。日本での最大震度は6強。おまけに、富士山の近くで火山性の地震が起きてる……もしかしたら噴火するかも!』


「フジサンだと⁉︎ アイミ姉ちゃんの家のすぐ近くじゃねえか!」



 アイミ姉ちゃんの家は、フジサンとかいうデカい火山の近くだって聞いた事がある。今はメルさんたちをケージに入れて避難してたはずだが——もし噴火したら、みんな巻き込まれてしまうかもしれねえ!



『……ネズミさんの世界は、今のところ特に何もないわ。でも……日に日に、波動が乱れてきてる。このままだと、同じように災害が起き始めてしまうかも』


「分かった! また何かあったら教えてくれ、ミランダ!」



 ここは何としても、ガイアドラゴンを止めなければ……!



『攻撃が一切通じないか! ……なら、五神合体だ! みんな行くぞ!』


「おう!」



 ソールさんの号令で、前と同じように5機の守護神マシンが合体し、スター・マジンガの姿に変化していく。

 ボクはすかさず言った。



「ソールさん、みんな! 五神じゃないぜ! これからは七神だ‼︎ ……行くぞ、スピカ!」


『せやな! ウチらも合体するで!』



 アストライオスとイーリスは変形し、アストライオスはスター・マジンガの胸部に、イーリスは巨大なウイングに変形し、背部に合体する。

 胸部には新たにオレンジ色のV字形のシンボルを、背部に大きな白いウイングを装備した、新たなスター・マジンガが誕生した。



「……素晴らしい。みんな! この新生スター・マジンガで、共に戦おう!」


「おう‼︎」



 みんなコクピットに集まると、ボクは目の前に迫るガイアドラゴンをひと睨みした。

 初めてスター・マジンガに搭乗したあの時は、ただしがみついてるだけだったが——。

 今は、一メンバーとして、共に戦うんだ!



 スター・マジンガ・改

 Lv.250

 ロボット


 属性……陽


 体力 77777

 魔力 3015

 攻撃力 7150

 防御力 6858

 敏捷性 6151

 魔法力 7088


 耐性……全属性

 弱点……無し


 超必殺……

 閃・流星斬



 火口から出てきた、ガイアドラゴンが迫る!

 スター・マジンガ・改は飛び上がり、ガイアドラゴンの体当たりをかわした。



「星剣、エターナルソード!」



 黒い空から、流星のように星剣・エターナルソードが飛来し、スター・マジンガ・改はそれを右手で鮮やかに受け取った。

 喰らえ、ガイアドラゴン!



「「「「「「「閃・流星斬‼︎」」」」」」」



 稲妻のごとき閃光に包まれた一撃が、ガイアドラゴンを襲う!

 どうだ——!



「な、効いていない⁉︎」


「そんな!」


「ひとまず防御態勢に移れ!」



 まさか、スター・マジンガ・改の必殺技ですら効かないなんて。

 すぐにガイアドラゴンの反撃が来ると思いきや——ガイアドラゴンは動きを止め、目の赤い光が消えた。

 何か様子がおかしい。スターマジンガ・改はガイアドラゴンから少し距離を取った。するとガイアドラゴンは再び口を開き、語りかけてきた。



「……コノ世界ノドコカニアル〝菊花ノ剣〟ヲ探シ出セ。ソノ剣ヲモッテ、我ヲ倒セ……急グノダ……我ガ完全ニ悪シキ波動ニ飲ミ込マレル前ニ……!」



 キッカノケン——?



「ソ……ソール、ここは従ってみる?」


「そうだな、マーキュリー……。その菊花の剣以外の攻撃が通じないなら、そうするしかないか! ……ガイアドラゴン! 我々はその剣を探しに行く! その間、地震や噴火などの災害を起こさないと、約束してはくれないか?」



 ガイアドラゴンは、機械仕掛けのその首を、真っ直ぐに縦に振った。



「良イダロウ、約束シヨウ……。サア、行クノダ! ト、ソノ仲間タチヨ!」

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