第3話
「――朝はここまで。放課後はベンチメンバーの発表するから全員ちゃんと来いよ。じゃあ、シュート錬したいやつだけやって、それ以外は解散」
顧問が号令をかけ部員一同が「はいっ!」と大声で呼応する。
ほとんど全員が残って体育館内の一角、バスケットゴールに向けて各々シュートを打ち出す。僕も同じようにシュートを放つ。フリースローラインのやや右側で、ジャンプシュートを放つ。弧を描いたボールはガコンッとリングの右端に当たりコートの右側に跳ね返っていく。
入ったり入らなかったり、いや入らないほうが断然多い。諦めて僕は朝練を終了した。
なんでこんな部活に入ったんだろうと思っていた。確かに始めた当初はボールをつかむ感触、シュートが入った時のゴール紐をはたく音の気持ちよさが心地よかった。
しかしそれもちょっとの間だけだ。練習が本格化すると走ってばかりで疲れるだけだ。一年二学期になってからは練習試合にも出してもらえるようになったが、シュートを打てども入らず、ディフェンスはすぐ抜かれる。周りとの力の差を思い知らされた。練習してもうまくなってる実感がない。
そんなときからか、僕は部活に大した楽しさを感じられなくなった。
身支度をして教室へ向かう道すがら、同じく朝練を終えた部活動の集団と合流する。そのなかで目が合った何人かが声をかけてきた。
「おう! おはよう」
「おはよう、よっちゃん」
声をかけてきたのはよっちゃん。小学校からの友人だ。それにシンタロウにユウキ。全員、反対側のコートで練習を行っていたバドミントン部のメンバーだ。
「近頃、頑張ってるね。交流大会近いから?」
「そりゃそうよ。バスケ部も一緒だろ? どうだ、試合には出られそうか?」
あはは、どうだろね、と僕は苦笑する。一応、二年生だけど自分がスタメンに入れる自信はない。ちなみによっちゃんたちはみんなバドミントンが上手い。市内の大会では基本的に上位、県大会でもベスト16に入るほどだ。
なんでこんなに差がついたんだろうと、時々疑問に思う。そもそもスポーツの種類も参加人数も違うから一概に言えるわけではないが。
ただ、漠然とそう思った。
僕がこの三人を意識するのには理由がある。
よっちゃん、シンタロウ、ユウキ、この三人は小学四年生のあの時、公園で一緒に遊んだ三人だった。
僕と違い、「踏切の向こう側」に行くことのできた三人だからだ。
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