第3章 高天原の乱

第1話 3大魔導都市


「暑くなってきたな~」


 教室から窓の外、空を見上げると無駄に照り輝く太陽が悠然と存在する。

 すでにシルヴィー女王が返ってから1か月が過ぎようとしている現在、夏が目前へと迫っていた。


「のんびり外を眺めてるとはいい身分だなぁ~」


「あ…」


 そして油断していると後ろからとても嫌な声が聞こえて振り返ろうとした…が、それよりも速く俺の頭が鷲摑みにされていた。


「さて、よそ見していたお前には特別に説明させてやろう。前に出ろ!」


「いたたたたっ‼前に出ろっていうか引きずってますよ~」


 担任の森谷 実子は獣人種ならではのバカ力で俺を電子黒板の前に強制的に連れていかれる。

 正直、途中で一回だけ本気で抵抗してみようとしたけど少し緩む程度だった。なんでもありなら負けないけど、さすがに純粋な身体能力だけだと勝ち目はないな。

 ということで、大人しくお題が出されるまで待つことにした。


「では、黒城に説明してもらうのはマギルティアが生み出した者でも代表的と言われる『3大魔導都市』について詳しく説明してもらおう。この説明しだいで夏休みの予定が補習で潰れるかが決まると思え」


「さすがに罰則が横暴だ!」


「無条件がよかったか?」


「いえ、喜んでやらせてもらいます‼」


 夏休みを補習で潰されるのだけは嫌なので即答した。

 だって、夏には季節限定のデザートやフルーツが出てくるんだ。全部を制覇するには夏休みの期間は長くない、だというのに半分以上を独占する補習なんて受けてられるか。

 そんな必死な俺の様子に満足げにうなずいた森谷先生は頷き、電子黒板に3大魔導都市の基本的な資料を表示した。


「開始」


「はぁ…では、まずは『3大魔導都市』と言うのが何かを説明します。3大魔導都市とは全世界的に起こる異世界召喚、それに加えて公表された超常存在と世間でのいさかいの解決のために迅速に対処するために考え、生み出された魔導技術の神髄を詰め込み作り出された人工都市の事だ」


 そこまで説明して後ろの電子黒板の資料の中から3都市の写真を表示する。


「それぞれに『陸・海・空』を担当して常に世界中の異変を警戒・監視している。海を担当するのは海中都市『アトランティス二世』伝説上の都市とされていたが、実際に存在していてマギルティア創設において協力を得ていたつながりもあり。拠点ともなる都市の建設に際しても大きく協力してもらった恩から名を貰ったとされる」


 そう言って電子黒板の海中都市『アトランティス二世』の写真を拡大した。


「アトランティス二世は海中にも調和するように作られ巨大な貝のような形をしている。上蓋にもあたる部分は緊急時以外では深海などを直接観賞することもできるため一部では巨大な水族館のような人気も高い。そして世界中の海を回遊しながら海中や海上での異変に対処しているて、基本的に人魚などを筆頭に海中に適性のある種族が多く暮らしている。他種族がストレスを感じすぎないようにされてはいるが、当初は極度のストレスで体調を崩す者も多くいたために生活する種族の偏りが大きくなったと聞く」


「次に陸の地中都市『アガルタ』こっちも伝説や定説としてよく出てくる地底の理想郷のような物だが、こちらは存在してはいなかった。なので本当の意味での理想郷になるように!と願掛けの意味もありつけられた名称だ」


 そう言って今度は地底都市の写真を拡大表示する。

 地底であるはずなのに不思議と空から明かりが降り注ぎ、緑生い茂るまさに『理想郷』と言えるような光景がそこには広がっていた。

 建物自体は海底都市で映っていた物と大差ない。


「このように一見するとアトランティス二世との違いはないように見えるが、決定的に違うのは世界各地へと通じるゲートの存在だ。写真だと少しわかり難いが、奥の方に見える凱旋門のようなモニュメントが、ストーンヘンジのように並んでいるのが見えるだろう?あれが全て空間を繋ぐゲートだ」


 少しわかりやすいように拡大して表示した写真には巨大な門が幾つも並ぶのが見えた。その門の中は空間を繋ぐために歪んでいるように映っていた。


「あのゲートは世界各地の子機となる門へと繋がっている。その子機には周囲の異常を探知する機能が搭載されていて迅速に行動できるようになっているわけだ。そして地底都市の最大の特徴は世界最大の工場が並んでいて、現在の魔導科学の根幹となる部品は全て地底都市で生産されていると言っても過言ではないだろう」


 そこまで説明して拡大していた画像なんかを消して、最後の天空都市の説明をする。


「さて、最後はもはやみんなには説明する必要はないと思うが…最後1都市、天空都市『高天原』は文字通り空中に浮遊する一大都市だ。上空から世界中の異変を監視して、上空での幻想種などと航空機の接触事故が起きないように管理もしている」


「そして俺達が今居る学園などを始めた後生の育成などを強く進めている場所でもある。名前の由来としては制作時から関わっていたのが日本の妖怪や亜神が多く、それらの意見が強く作用した結果として日本由来の名前が付いたという話だ。各国からはえこひいきだ!と言う声も上がっていたが『なら既存の国・宗教などにかかわらない独創的な名称を瞬時に出せ』と言われ、何も言えずに引き下がったらしい。中には提案した者も居たらしいが、時刻を前面に出した空気を読まないもので…提案した者は次の日には地位を失っていたそうだ」


「そして3大都市最大の役割もあるが、これは極秘情報なので説明しない」


 ここで説明を終わると森谷先生へと確認の視線を送ると、しばらくしてゆっくりと頷いた。


「よし、今回はギリギリ及第点だと言っておこう。次からは気を付けるように」


「は~い」


 なんとか、乗り切った。

 許可も出たので席へと戻ると、まだ監視の目が飛んでくるため一先ず今日の授業が終わるまでは真面目に受ける事にした。

 あぁ……早く学校終わらないかなぁ~

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