第29話戦略訓練②
「南方……セレスティア共和国との戦線ですか」
メリリアが尋ねる。
「そうだ。南東のバーム公国と同盟を組んだらしい」
「なっ……」
メリリアが驚愕する。
実務にあたっていたギークを始めとした貴族たちもその言葉に少なからず驚きを見せていた。
「おいリルト。それって何がまずいんだ」
アウェンが耳打ちで聞いてくるので自分の頭を整理しながら答える。
「セレスティア共和国は西と南は特に大きな敵国がなくて交易もしているんだけど、南東のバーム公国とだけは不仲で、背後を警戒してくれているおかげでいままで戦線を維持してきたんだよ」
「んーと……つまり……」
「セレスティア共和国はこれで、全戦力を帝国に当てられるようになる」
「そりゃ……」
アウェンも理解したようだ。
「帝国の各戦線から兵士は集めるが、指揮官クラス、エースクラスは動かせねえ。お前たちに期待される動きはまずは実働の兵士クラスだが、実地ですぐに指揮を取ったり戦場のキーになることもある」
確かにメリリアの魔法やアウェンの剣技は、それだけで十分に戦況を動かすエースクラスだろう。
「実技レベルの活躍は他の講義で聞け。ここでは指揮官として現地で活躍を求められた際の動きを確認していく。まずあるとするなら、現地における班長クラス、場合によっちゃすぐ隊長クラスだ」
班は数名だが隊となると数十人から数百人。十分戦況に影響できる人数だ。
南方戦線は2万ほどの兵士を置いていたはずだが、後顧の憂いのなくなったセレスティア共和国は人数を増やす。
倍以上の戦力増強を考えるとすれば……指揮官不足の中立場や能力のある人間ならいきなり隊を率いることは十分あり得るか。
「訓練校からは我々しか出ないのですか?」
メリリアが尋ねる。
「お前らと同じように特別クラスとして入学してきたやつらはすでに各地に送られている。一般クラスのやつらも動員はするが、正直言ってお前たちにかかる期待とは全く違うものになる」
「なるほど……」
思ったより早いデビュー戦ということになりそうだった。
「この講義では指揮官としての能力を磨くことになるが、即戦力を求める現場でこの力でやっていけるやつは本当に一握りだろう。もしこの講義内でその力を示せば、私の権限で階級を上げてから現場に送り出す」
クラス中がざわめく。
「特別昇級……」
「訓練校時点でクラス0ではなくなるということですか」
サラスとメリリアが小声で呟いた。
「その力の判定だが……こいつで行う」
ギルン少将が持ち出したのは地図。
「史実に基づく戦況において、お前たちが指揮を執った場合にどうなるか、実際に見せてもらう」
地図が立体に広がった。そこに兵士や拠点設備、武器や戦力が表示される。
「盤上の模擬戦だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます