第28話戦略訓練①
「戦略訓練を開始する」
ギルン少将の声が教室に響く。
「このクラスにはすでに実戦経験のあるやつらもいるからそれに合わせる。当然予習は済ませてあるな?」
実戦経験組の筆頭がギークたちだ。
一方、戦争経験がまったくなく、予習が最も必要なのが俺たち入試組だろうな。
「一応調べてきたにしても……自信はねえな」
「大丈夫ですよ。わからないことはこれから覚えれば良いのですから」
なぜかこちら側に座るメリリアが、弱音を吐くアウェンを励ました。
「このクラスは特別クラス、将来は今の私よりも上の立場になるものも多いだろう」
クラス7、少将の地位より上……か。
「帝国は常時、多方面に戦線を張る。そのため各戦線ごとにトップ……つまり元帥が置かれることも多い。お前たちがこれから目指す最終地点だが……さて、この立場に立つものが意識せねばならぬ道を答えろ。サラス」
「ん。『王道』」
「正解だ。意味は?」
「他を慈しみ、徳を持って道を為すこと」
「よく勉強してきたな」
王道。
トップが目指すのは全てだ。
だがその基本となるのは徳。善の心を持ってことに当たらねば人がついてこない。
だからどれだけ効率が悪くても、たった一人でも捕虜を取られればそれを全力で奪還する選択を取る。それが巡り巡って、最も人を引きつけ効率を上げることにつながる。
「まあとはいえ、軍人として考えれば元帥も将もここまでは考えられん。これが必要なのはむしろ王家や上位貴族のほうだろうな」
ギルン少将の目がメリリアとギークを捉える。
「では軍司令部として必要な道はなんだ。リルト」
ギルン少将と目が合う。
「『覇道』です」
「よし。お前の覇道を語れ」
「礼を持って相手を立てます」
「ふむ……その目的は何だ」
「頭を下げるのはタダですから。相手を気持ちよくさせればその分、楽になることが多い」
「良いだろう。武と知を持って支配することだが、そもそも軍は前提として武の塊。あと必要なのはそういった知の部分だな」
答え終わるとアウェンがすかさず声をかけてくる。
「なんかお前が言うと実感こもっててこええな」
「なんでさ」
笑いながら答えておいた。
その後も確認が続く。
実務レベルに求められるのは事実を正確に伝える『天道』。
そして労働層の上位、つまり俺たちが意識しないといけないのは……。
「『正道』。法治に基づき、勤勉に働けば上が守る仕組みこそ、帝国を支える民の義務です」
ギークが答えていた。
「もっとも、勤勉でも馬鹿では邪魔ですが」
「そうだな。実はな、予定が早まってお前たちにはすぐにでも南方の戦線に赴いてもらう。そこで求められるのがこの勤勉さと、事実を正確に伝える力だ」
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