第27話 休日

 訓練校の休みの日。

 例の魔法訓練の補講があるということでアウェンは自分から受けに行くことにしたらしい。なんでも「俺は本当の意味であの課題をクリアしたわけじゃない」とか。

 見かけよりも真面目で、これまでも努力を積み重ねてきたことが窺い知れる言動だった。


「さて……それじゃ……」


 改めて手紙の内容を確認することにした。

 もちろん一通りの内容は見ているんだが、何か暗号がないかといった細かいチェックはここまで時間がなくてやっていなかった。


 中身は……。


 ◆


 リィトへ


 どこでなにをやってるのかしら?

 私をこれだけ長く待たせて、覚悟はできてるんでしょうね?

 とにかく早く戻ってきなさい。これは命令よ。

 貴方の給料も何もかも、私の一存でどうとでもなるのよ?

 とにかく、一刻も早く戻ったほうが身のためよ?

 いいわね?

 わかったかしら?

 ほんとに早く帰ってこないと、ただじゃおかないんだから。


 いいわね!


 ◆


「……うん。暗号も何もない姫様直筆の手紙だ」


 考えないといけないことは二つ。

 まずはこの手紙を受けて姫様にどう対応するかと、帝国側に──いやこの場合メリリアにどう対応するかだ。


 まずは姫様だけど……。


「どこから場所がバレたんだろう……」


 まあバレた上で手紙しか出せないというのがここの安全性の高さを物語っているわけだけど……。


「探ればわかるんだろうけど……メリリア相手にそれをやる方が今はリスクかな……」


 相手は帝国第二皇女。やるならそれなりの準備は必要だ。労力に見合うかといわれれば……この状況でそれを選ぼうとは思えない。


 バレた原因をつぶすより、事実を受けて対応を考えた方がいい。


「姫様はまあいいか」


 手出しができないというのがわかったし放っておいてもいい。むしろここで姫様が暴走してここに仕掛けに来れば返り討ちに合うだけだ。

 そうなった時はそうなってから動いても何とかなるだろう。


 現時点ではどう動いても問題にしないと言っていたし。

 これに関してはメリリアを信じるなら、という話になるが……その点は問題ないだろう。今日話して敵意も害意も、他意も感じない。


「第二皇女メリリア……」


 不思議な人だ。

 だけどあのタイプは、姫様との付き合いの中で見たタイプでもある。


「好奇心で生きてる……」


 裕福な貴族家で跡取り問題に関わることもない立場にたまにいる。

 だとしたら、その好奇心を満たしてあげているうちは味方だろう。


「帝国で活躍していく未来を見せれば、それで大丈夫なはず」


 特別クラスは数ヶ月もすれば実地に送られる。

 それまでの各授業でメリリアの好奇心を満たしていこう……。

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