第22話 訓練校生活
入学試験は無事終わった。
アウェンも実技で試験官に選ばれたこともあり、二人ともめでたく最上位クラスでの入学となった。
「にしてもこれ……入学試験にいたの、俺たち4人だけじゃねえのか?」
アウェンが言う通り、指示された部屋にはあのとき試験官側になった人間以外、見知らぬ生徒しかいなかった。
試験なしに入学を決めているエリートたちということか。
その中の一人、金髪をかきあげた姿が印象的な男が椅子にふんぞり返ったまま声をかけてきた。
「おや。出来損ないの中にも少しはマシなのがいるということか。精々足を引っ張らない程度に頑張ってくれたまえ」
「ギーク、あんまりいじめちゃ可愛そうじゃない? 試験受けないといけなかったやつらなんてどうせそのうち落ちるんだし」
「そうよ。私達はもう実戦に出てるんだし、あんな素人とは違うんだしさぁ」
ギークと呼ばれた男は両脇に女の子を侍らせている。
服装だけでまあ、見るからに偉い……というか偉そうな感じだった。
いや待てよ……この顔、見覚えがある。
「まーた変なのが出たな」
アウェンがこれみよがしにそう言うがもう興味はないとばかりにこちらから視線を外していた。
覚えている。
姫様に仕えていた時、幼かった彼を何度か見ていた。
ギーク=フォン=カルム。カルム辺境伯領の跡取りだ。
そしてカルム辺境伯領はアスレリタ王国、キリク王女とつながりがあった唯一の帝国貴族。
そんな事を考えているとふと後ろから声が聞こえた。
「ごきげんよう」
「メリリア殿下」
「殿下はやめましょう。ここでは皆同じ生徒ですから」
「ですが……」
「それに、私にだけ敬語というのも少し……寂しいですね」
ずるい人だった。
唇を尖らせるその姿もわざとだというのに画になる、そんな人だ。
「これはこれは。メリリア殿下。ご機嫌麗しゅう」
「ええ、ギーク殿。皆さんお揃いのようで」
あれ? 俺には敬語がどうこう言ってたのに?
ツッコミを入れる間もなく、担当教官が教室へやってきた。
扉をくぐるほど大柄なその姿は……。
「揃ってるか?」
ギルン少将だった。
「よーし。特別クラスを担当するギルン、階級は少将、さて問題だ。俺のクラスは何番になる? そこのやつ、答えろ」
「はっ。クラス7になります」
「そうだな。試験がなかった奴らの知識レベルもこうして確認していく。軍では馬鹿がどうなるか知ってるか? お前ら」
ギルン少将の質問の意図を理解した者は半数くらいだろうか。
ギークが率先して答えを告げた。
「馬鹿は前線に送る。それが働き者であればあるほど早い処理を求められます」
「うむ。ここにいる者たちは将来我が国を背負う立場を期待された者たちだ。そうであっては困る。故に諸君、よく学べ」
馬鹿は前線に送る……か。
それに働きものであればあるほど……冷たい話だが理にかなっている。
同じ馬鹿なら何もしないでいてくれたほうが被害は広がらないからな。
「早速だが、君たち特別クラスの者には数カ月もすれば実戦の場に向かってもらうことになる。その時君たちが馬鹿ではないことを心から祈っている。だが君たちはクラス0、見習士官だ。戦地で期待される役目は前線での活躍というケースも大いに有り得る。そのためこれから実戦までの期間、君たちは主に、魔法訓練、剣術訓練、戦略訓練の三種を徹底して取り組んでもらう。剣術といったが得意な得物があればそれでも構わん。とにかく強くなれ。そして頭を鍛えろ。良いな?」
「「「はっ」」」
いよいよ訓練校生活が始まった。
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