第7話 フレアリザード(骸)
「しっかしお前、まじで無一文なのか」
「あはは……」
正確に言えば帝国で使えるお金が無一文、だった。
道中は自給自足で良かったんだけど流石にここで生活するにはお金が必要だ。
換金はしたいな……。いつまでも借金をしているわけにもいかないし。
ただ王国の金貨をそのまま換金するのはちょっと避けたい。となると……。
「アウェン。魔物の素材って冒険者じゃなくても買い取ってくれるんだっけ?」
「ん? ああ。持ち込む分には誰でも……ってお前、今から取りに行く気か?」
「いや、売れる当てがあるから行こうかなって」
「そうか。じゃあ案内してやるよ」
なんだかんだで本当に面倒見の良い男だった。
感謝しながらついていく。
「ここだ」
「おお……」
到着したのは貴族の屋敷と並ぶほどに大きな建物だった。
よくよく考えたらここ、帝都だもんな。立派なはずだ。
「いいか。お前は装備は整っても覇気がねえ。舐められねえように──」
「おじゃましまーす」
「おい聞けや!」
どうせ舐められるのはわかっているしものを売るだけなら別に良いだろうと勝手に踏み込んでいく。
ごめんアウェン……。
はいった途端、ガラの悪い男たちの視線が一斉に突き刺さってきた。
「はぁ……どこの世界にギルドに入るときお邪魔しますっつうバカがいるんだよ」
追いかけてはいってきたアウェンに視線が映った途端、ギルド内がざわめいていた。
「なっ!? あいつ……アウェンじゃねえか」
「アウェンってあの、黒刃こくじんのアウェンか!?」
「なんであいつが……」
「それよりあんなひょろいやつが知り合いなのか?!」
どうもアウェンは有名人だったらしい。
そういえば門番のところでも外では名が知れてるって言ってたっけ。
「有名人なんだね」
「ん? ああ……まあいいだろ。とりあえずカウンターに行くぞ。買取はあっちだ」
自分で名が知れてるとか言ってた割にいざこうやって囃し立てられると照れくさそうになるところが、この短い付き合いで感じるアウェンらしさだなと思わせていた。
「いらっしゃいませ。買取でよろしかったでしょうか?」
「はい。お願いします」
カウンターごしのお姉さん……いやおばさんだった。
受付嬢が美人というのは幻想だな。
指示によればカウンターに並べればいいらしいんだが……。
「にしてもお前、素材ってかばんに入れとけるようなサイズじゃあたかが知れてんじゃ……」
「すみません。ちょっと量が多いんでそっちのスペースでもいいですか?」
「え? はぁ……」
怪訝そうな顔で受付のおばさんが一応ながらも許可を出してくれた。
見せたら分かるか。
革袋から一匹目の素材……というかそのまま血抜きだけしたフレアリザードを取り出してカウンター脇のスペースに転がした。
「えええええええ!?」
「フレアリザードってBランクの魔物じゃねえか!?」
思ったより良い魔物だったようでギルドが騒然としてしまっていた。
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