[ショートショート]生物実験室
つゆ
生物実験室
とある夕日が陰る日、部室である生物実験室に忘れ物を取りに行くと見知らぬ老人がいた。もうすでに活動は終わっている。特別な用で来た外部講師のようでもない
聞くとその老人はXだと名乗った。話によると彼はこの学校の古い卒業生のようだ......なぜこんな男がいるのだろうと疑問に思いつつ、話を聞くことにした。
私は今から50年ほど前にこの学校にいた。何故かもう無くなっているがその当時は生物部があった。そう、いろんな生物を飼育していたさ。カエルやトカゲ、鳥に......そう。いるはずもない生物もいた。”X”だ。
この学校はその昔、政府が秘密裏に作り出した生物を隠していたところでもあった。普段は厳重に何重ものゲージに入れられ、さらに鍵まで掛けられていたんだ。
そう”あの日”まではな。
”あの日”......はそうだな......今日みたいな日だった。夕日がきれいな日だった。
私は確か忘れ物をしてこの部屋にやってきた。なぜか中から物音がする......
きっと誰かが残っているんだろうと部屋に入った。
そこは少なくとも自分が知っている部屋ではなかった。荒れに荒れていたのだ。
恐る恐る中へ入ると周りを「スッ」「スッ」と駆け回る音がしたような気がした。
次の瞬間、赤い目が見えたのだ。そう。”X”だよ。私は無我夢中で部屋から逃げ出した。しかしその後の記憶はない。
目覚めるとそこは見知らぬ天井、病院にいたようだ。それから起こったことはついさっきまで忘れていた。目の前で”ヤツ”が逃げ出したのだから政府になにかされたんだろうな。それからはなんてことのない日常を送っていた。今日までは。
そして今日。なにかに呼ばれるようにこの部屋へ来た。そこで全てを思い出したんだ。”あのことは”一部の人間しか知らない機密だ。それを君は今知ってしまった。いや知るべきだったんだろう。理由はただ一つさ。
そこまでNが話し終えると、急に黙った。
男の目が赤く光ったように見えた......
[ショートショート]生物実験室 つゆ @tsuyu_39
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