ある冬の夜、レイトショーに訪れた映画館には「彼女」ひとりしかいませんでした。ひっそりと静まり返った館内。スクリーンに映る過去の自分。時の流れを感じる彼女の右手は、最後まであたためられることはなく……。読後、「彼」との間にどのようなできごとがあったのか、過去と現在、そして「彼女」の未来を思うと、物語の結びをもの悲しくは感じませんでした。ほんのりとあたたかさの残る作品です。