第16話:屯田兵
魔獣に腹を貫かれた国王は、魔法薬で傷が癒え命は助かりました。
ですが魔獣の爪についている毒か菌の影響でしょう、内臓が腐ってしまいます。
徐々に内臓が腐っていく激痛は、表現しようもないほどの痛みのようです。
国王は四六時中痛みに苦しみ、ベットから跳ね落ちるほどです。
見るのも聞くのも嫌なのですが、魔獣が映像と音を伝えてくるのです。
「聖女様、聖国軍の屯田軍の事ですか」
「神殿長にお任せしますから、好きにやってください。
肩書が必要なら、聖国大将軍を名乗ってください」
神殿長が隣国の侵攻を心配して、屯田軍を編成すると言い出しました。
辺境に逃げてきた民も賛成しているようです。
彼らも隣国の動静が気になるようで、どこからか噂話を集めてきます。
大抵の民が徴兵された経験があるので、全く戦えない訳ではありません。
ですが、専門の兵士には全く敵わないと思うのです。
それに、魔獣が獣を大量に狩ってくえるとはいえ、農作業を疎かにする事もできませんが、まあ、それが理由で屯田兵にするのでしょう。
「ありがとうございます、これからは聖国大将軍として聖女様のために働かせていただきます」
半ば冗談で言ったのですが、本気にしてしまったようです。
でも、まあ、誰かが民を支配指導しなければいけないのも確かです。
実際問題、この国を支配していた王侯貴族が誰一人残っていないのです。
適任者は将軍の経験がある神殿長だけでしょう。
とても私には不可能な事ですから、丸投げするしかありません。
「そうですか、宜しく頼みましたよ。
それと、隣国にこの国の王侯貴族が逃げ込んでいますが、王位継承権を買い取り、この国に侵攻しようとした者がいると、神様からお告げがありました。
ですが神様が天罰を下されたので、何の心配もいりません」
本当は魔獣が伝えてくれたことを、神様に置き換えて神殿長に伝えました。
特に重要だったのが、天罰の噂が全ての隣国に伝わった事です。
先陣を切ろうとした国王が、天罰を受けて病床に伏しています。
とても政務に携われる状態ではないので、最悪の状況だと言えるでしょう。
死んでいてくれた方が、新体制を築いて動くことができます。
死なずに激痛に苦しみ政務が取れない方が、何も決められなくなります。
「その噂が多くの国に広まっているので、他の国の国王も天罰を恐れ、この国に侵攻する決断は下し難いでしょう」
「はい、その通りだとは思われますが、油断大敵でございます、聖女様。
人の欲とは信じられないほど愚かな決定を下す事がございます。
神様が他の大事のために眼を離されておらる事もあり得ます。
そういう時があるから、聖女様が辺境に追放されていしまわれたのです。
ここは国中に屯田兵を置き、隣国の侵攻に備えましょう」
ああ、そうですか、好きにしてください。
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