第8話:祈り

「聖女様、神様の罰が厳し過ぎると思うのですが……」


 神殿長が天罰が激しく多すぎると文句を言ってきます。

 確かに多すぎるでしょうね、私がやらせているですから、神様のように偶に激烈な天変地異を起こすのとは規模も回数も違います。


「気に入らないというのなら、私はここから出て行きましょう。

 私が住むところは、神様の教えが最優先です。

 人間の非道な行いを礼金をもらって許すような、下劣な行いはできませんよ」


 まあ、神様の教えではなく、私の正義感だけですがね。

 女性の権利がないに等しいこの世界この国では、私との考えの差は大きいです。

 男たちには、今までの常識とこことの違いに不平不満があるのでしょうが、私は後に引く気はありません。

 私の加護を受けて生きていきたいというのなら、私の基準に従ってもらいます。


「私は賄賂をもらって罪悪を許したわけではありません。

 神殿の修行で教わった通り、罪を悔い改めている者に許しを与えているだけです」


 愚かな事を!


「それが間違いであり思い上がりだと言っているのです!

 その神殿の修行というのは、神様の言葉を直接頂いたのですか?」


「いえ、私にそんな資格も力もありません。

 神殿長や高位神官に教えていただいた事です」


 多くの敵を殺してきたことで、心の奥底に罪の意識があるのかもしれませんね。

 そこに建前の教えが入り込んできてしまい、神殿の腐敗が見えなくなっている。

 いえ、見えていて、正そうとする気持ちがあるから、孤児を集めて助けたり、難民を集めて助けているのです。

 でも、建前の教えを信じ実行しようとするのは愚かすぎます。


「では聞きますが、その神殿長や高位神官は、困っている者を助けていましたか?

 賄賂を受け取って免罪符を与えていたのではありませんか?

 そのようなモノの言う事を鵜呑みにして、眼の前の神様の奇跡を疑うのですか?

 この、不信心者が!」


「申し訳ありません、申し訳ありません、申し訳ありません!

 私が愚かでございました、悔い改め心を入れ替えさせていただきます。

 人間の神殿長や神官ではなく、神様の御使いを信じるべきでした。

 今までの自分の愚かな言動に深く恥じ入るばかりでございます」


 やれ、やれ、神殿長は愚かな人ではないのですが、心に弱さがあるのです。

 その弱さを、悪人に突かれ利用されてしまうのです。

 今ここで悔い改めて考えを変えたと言っていても、直ぐにまた迷う事でしょう。

 悪人は神殿長のような人間の弱さを突いて利用するのが得意ですからね。

 まあ、でも、多くの魔獣が私の祈りに集まってくれましたから、監視の目も天罰を与える手も増えているから大丈夫でしょう。


 しかし、こんなに魔獣を手先に使っていて、神様がいつまで私に聖女の力を与えてくださるのか、心配です……

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