【旧約】ビクスキ！女性しかいない異世界で虐げられてきた俺、最強の《触れた女性をビクンビク〇させるスキル》でざまぁ+成り上がり

第189話 三者三様

　「キュキュキュ～キュ、キュキュキュ！」

　「「「キュキュッ！」」」」

　「…なんて言ったのアマーリエ」

　「女王を救いに行くぞ！…だ」

　「長い付き合いだけど、あんたにそんな才能があったとはね」

　「ゼルマも学ぶぞ！」　

　「遠慮しておくわ」

　ゼルマの感心しているのか呆れているのか分からない反応を受け流し、私は【シオドアリ】の群れに命じた。

　アリたちは一斉に反転し、巣の方面へと戻っていく。

　先ほどの崩落で巣の道が塞がれているようだが、そこは土木工事に優れた種族。

　人海戦術でみるみる掘り進め、巣の至る所へ移動していった。

　彼らに与えたのは、崩落した巣の復旧および助けを待っているであろう女王の救出。

　【ゲトアリ】の群れは【ドミー軍】だけで事足りるため、そちらを優先させた。

　(さて、問題は我々がどうするかだが…)

　「大丈夫よ、ドミー将軍も【ドミー軍】もみんな無事だわ」

　「いつの間に心を読むスキルを会得したんだゼルマよ」

　「あなたの考えていることなんてすぐ分かる」

　ゼルマは『なんでもお見通しよ』と言った表情でこちらを見ていたが、やがて険しいものへと変わった。

　「あ、でも将軍がもしかすると危ないかも？」

　「それは私も感じた。どうやら、先陣を切って危機へと飛び込んでいるらしい」

　「らしいっちゃらしいわね。それを助けるのが…」

　「我らの役目。では【ドミー軍】の新参たちよ！」

　後方で待機している新兵達に呼びかける。

　「いつも通りな将軍を救いに行くぞ！」

　「「「仰せのままに！」」」

　初陣だが少し退屈な任務に飽きていた新兵たちは、戦いの気配にウキウキしているらしい。

　やや高揚しながら巣に飛び込んでいく。

　「あたしたちも行きましょう」

　「いや、少し待て」

　ゼルマも巣の中に入ろうとするが、止める。

　「こほん…こんな時になんだが、この任務が終わったらゼルマに話したいことがある。後で時間をもらってもいいかな」

　「…一応聞くけど、どんな話？」

　「それは、秘密だ」

　「分かったわ。でも1つだけ言っておく」

　ゼルマは先ほどと同じ表情を浮かべた。

　「あなたの考えてることは、大体わかるわ」

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　「行くぜ！臨時編成の【ドミーアリ軍団】たちよっ！」

　(どみーさまのめいにしたがうのです！)

　「「「キュキュキュッ！！！」」」

　俺は【シオドアリ】のオス数十匹＋シオを率いて、【ゲトアリ】の潜む王室へと向かった。

　オスたちが何をしてたかって？

　繁殖以外の役割を与えられていないので、巣の中でじっとしていたらしい。

　崩落してどうしようか迷っていたところ、シオと俺を見つけたってわけだ。

　普段は軽んじられているオスが頑張る。

　俺としては、なんとなく気分が良くなる構図である。

　(しかし、何で数十匹もいるんだろうか。アリの女王が健在である限り、アリのオスに出番はないと聞いたが…まあ気にしても仕方ないか)

　そのまま進軍していると、【ゲトアリ】の幼虫たちが見えてきた。

　「ギュギューギュギュ、ギュギュギュッ！！！」

　「「「ギュギュギュ…」」」

　…未だに、俺が支配した【ゲトアリ】に足止めされている。

　まだ幼体だし、そこまで賢くないようだ。

　(どみーさま！あらてです！)

　ただ、しびれを切らしたのか新手の幼体の群れがこちらに向かっているのが見える。

　数は数十匹とかなり多い。

　【ゲトアリ】の巣乗っ取り計画もかなり進んでいたようだ。

　「さあ、出番だぞオスども！一瞬でいいからあいつらの攻撃を止めろ！」

　俺は拳の関節を鳴らし、戦闘態勢を取った。

　「そのあとは俺が無力化させる！！！」

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　な、なにが起こっているのだ？

　王室の中で右往左往しながら、【ゲトアリ】の成体は焦っていた。

　送り込んだ幼体からの連絡がない。

　【シオドアリ】とは別種の生物が巣に侵入している。

　しかも、どうやら【シオドアリ】側に味方しているようだ。

　もう少しでこの巣を乗っ取って、働かずに悠々と生活できたのに！

　【ゲトアリ】の習性に忠実なこの成体は、乗っ取り後の夢の生活を潰されつつあることを実感し、怒り心頭である。

　「ギュギュギュギュギュギュ！」

　「「「ギュギュギュ！」」」

　わずかに残った幼体に総攻撃を命じ、自らも出動しようとしたが、それは叶わなかった。

　「【ファイア・ダブル】！」　

　「【ストロング・ウィンド】！」

　「【スプラッシュ】！」

　突如現れた色とりどりの魔法に進路を阻まれたからだ。

　「ギュ！？」

　「ギュ～～～」

　「ギュギュ！ギュギュ！」

　なぜか命中することは無かったが、幼体たちは怯えて足がすくみ、動けなくなる。

　ええい、役立たずめ！少しは働け！

　怒りのまま魔法が放たれた方向に突撃しようとしたが、首に鋭利な感触を感じ、思わず立ち止まった。

　「動かないでください。ドミーさまがこちらに来るまでは」

　いつの間にか白い髪の人間が傍らに立ち、武骨な槍を構えている。

　体格差を考えればひ弱な存在のはずだが、成体は本能で感じた。

　逆らえば、殺される。

　「ギュ…」

　無念だが、力を抜いて降参の意を示すしかなかった。

　「それでよし、です」

　少女は槍を降ろすが、こちらを興味深そうに見つめる。

　「…ぎゅぎゅぎゅ、ぎゅ」

　「…？」

　「やはり通じませんか。アマーリエに少し教えてもらったのですが…」

　成体は、なんとなく空気を読むことにした。

　「ギュギュギュ！ギュギュ！」

　「ぎゅぎゅぎゅ？」

　「ギュギュ！」

　「おお…ミズアにもアリと話す才能があるようです。ライナに自慢しなくては」

　助かったが…あとで面倒なことになりそうだ…

　白い髪の少女が笑みを浮かべるのを見て、【ゲトアリ】の成体はやれやれと首を振るのだった。