第174話 ライナとミズアは卒倒し、ドミーはアリに会いに行く

 「捨てなさあああああい!!!」


 飛び込んでいく裸のライナをー、


 「危ない!!!」

 

 俺は抱きとめた。

 なるべくスキルで刺激しないよう優しく。


 ライナの体は熱く、かなり興奮しているようだ。

 …昨日は【強化】のため軽く【絶頂】させただけなのだが。


 「あれ…なんか違う」

 「どうしたんだ、ライナらしくない。いきなり裸になるなんて風邪をひくぞ。ビク〇ビクンしたいならー」

 「いや、そうじゃなくてさ」

 「?」

 「その…私と」

 「ライナと?」

 「を…」

 「どうした。はっきり言ってくれ」

 「…」

 「ライナ?」


 「ふにゅ~~~…」


 俺に何かを伝える前に、顔を真っ赤にしたライナは気絶した。



==========



 「はっ…」

 

 気が付くと、ホテル【フォンタナ】の部屋で私は寝ていた。

 いつの間にか【炎魔導士のドレス】を着せられている。


 「ライナ、大丈夫ですか?」

 そばには、心配そうにこちらを眺めるミズアがいた。


 「そうだ!ドミーは…」

 「ドミーさまはアマーリエに呼ばれ、部屋を離れました。その間、ミズアにライナの様子を見ておくようにと」

 「そっか…」


 (私も【ドミー軍】の幹部なのに、情けない…)


 「…何かあったのですか?」

 「え?」

 「本日目覚めたときから、ライナは何か悩みを抱えているようです。ドミーさまも心配しておいででした」

 「…」


 ー君には生死を共にした友人もいる。


 夢の中で言ってたコンチの言葉。

 これに該当するのは、今のところ1人しかいない。


 「ねえ、ミズア」

 「はい」

 「私ね、夢を見たの。とんでもない内容だけど、とても大事な夢」

 「…」

 「その内容をドミーに話さないといけないんだけど…」

 

 コンチに見せられた光景が頭に浮かぶ。

 頭に血が上るのを感じた。

 恥ずかしさと恐怖が、胸の中で渦を巻く。


 「その勇気が、でないの」

 「ライナ…」

 「私でもちゃんと出来るか、世界を救えるのか分からない。そもそも、私より本当はミズアの方がいいんじゃないのかって」


 (そうよ…)


 ミズアに手を伸ばす。


 私なんかより、ミズアの方がよっぽど女性らしい。

 だから、いっそのことミズアに役目をー


 「いいえ」

 

 私が伸ばした手を、ミズアは握らなかった。

 そっと丸めて、私の方に戻す。


 「どんな夢を見たかは分かりませんが、ドミーさまに関することなら、ライナが任に当たるべきです」

 「ミズア…」

 「でも安心してください。1人には致しません。このミズアが、全力であなたを助けます」


 私を信頼と愛情のこもった表情で見つめる。


 「だから話してくれませんか」

 

 (…コンチの言う通りだ)

 

 世界を1人で救うことなんかできるはずがない。


 だから、信頼できる人と力を合わせなきゃいけないんだ。


 「分かったわ」

 

 もはや戦友と呼べるかけがえのない友人を、頼ることにする。


 「あなたにすべて話す」

 


==========



 「…と、いうわけなの」

 

 コンチとナビに出会ったこと。

 世界の真実を教えてもらったこと。

 私が…母親にならなければならないこと。


 それを聞いたミズアはー、




 「ふにゅ〜〜〜…」

 

 卒倒した。


 「ちょっとミズアまで!?」

 「ライナ、恥ずかしいです…」

 「私も恥ずかしいんだけど!?」

 「もうお嫁に行けません…」

 「誰と!?」

 「でも…」


 顔を真っ赤にしながら、立ち上がる。


 「ライナが世界を救うため、痛みをも引き受けようとしているのに、ミズアが倒れては行けませんね」

 「…ありがとう」

 「とにかく、ドミーさまに対する働きがけが必要でしょう。ミズアも手を貸します」

 「うん。とりあえず…」




 こうして、乙女2人による作戦会議がしばらく行われた。

 世界を救うために。



========== 



 「どうされましたか将軍。浮かない顔をしていますが」


 アマーリエの出迎えを受け、ヴィースバーデンの街を出る。

 【ドミー軍】を30名ほど引き連れてだ。

 観光地であるヴィースバーデンの周囲に大きな村や街はなく、平原が広がっていた。


 「いや、なんでもない。個人的な事情だ。それでどうした?」

 「ヴィースバーデンの市長から訴えがありました。都市の近郊に【シオドアリ】が1匹確認されたと」

 「【シオドアリ】…聞いたことがあるな」

 「現在は住む者もいないランデルン地方に生息している生物です。地中に巣を貼り、数百匹が暮らしているとか」

 「ランデルン地方はここからすぐ近く…市長からすれば安心できないだろうな」

 「すでに先遣隊が20名ほど向かっています。もうすぐー」

 「将軍!」

 

 前方から【ドミー軍】の1人が駆け込んでくる。

 先遣隊の1人だ。


 「【シオドアリ】が暴れ出しました!我々が押さえていますので、退避してください!!!」

 「心配するな。俺が来たからにはもう安心だぞ。なあアマーリエ」

 「そろそろ、休暇は終わりということでしょうな!」

 「そういうことだ。お前の力を借りるぞ」

 「御意!」


 俺は生物学者ではないが、1つ知っていることがある。




 それは、アリが女性中心の社会だということだ。

  

 

 

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